Home >  研究会等 > 中性子で観る水素とスピンのダイナミクス

中性子で観る水素とスピンのダイナミクス

日程 : 2025年5月29日(木) 2:45 pm - 3:45 pm 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 講師 : 古府 麻衣子 所属 : 東京大学 物性研究所 附属中性子科学研究施設 世話人 : 橋坂 昌幸・川畑 幸平講演言語 : 日本語

物質の性質の基本的理解のため、物質を構成する原子や分子、スピンの構造とダイナミクスを調べることは必要不可欠である。中性子は原子/分子のスケールで動的構造を調べることのできるプローブであり、1945年の最初の回折測定以降、さまざまな系の物性研究に用いられてきた。近年の大強度中性子施設の建設、装置の開発・高度化により、その対象は拡大している。我々は、磁性やソフトマターのようなメジャーな分野にこだわらず、幅広い物質系を対象としてきた。講演では、金属水素化物ナノ粒子、ガラス形成液体、単分子磁石、スピングラスの研究を紹介する。金属水素化物では、重い金属原子がつくる結晶格子の間を水素原子が液体のように振る舞う。分子性液体では、ミクロなスケールで分子の拡散を見たときに、単純なフィックの法則に従わない挙動が見られる。一方、分子ひとつがナノ磁石のように振る舞う単分子磁石では、結晶場励起から決定したスピン副準位をもとに、磁気緩和プロセスについて知見を得ることができる。古典系スピングラスでは、構造ガラスで見られる局所振動励起(ボゾンピーク)に類似した磁気励起を観測し、クエンチした無秩序系の共通の性質を見出した。これらの例を通して、中性子が原子や分子、スピンのダイナミクス研究にどのように活用できるのか示したい。講演では、偏極中性子を用いた原子/分子ダイナミクス研究の展望についても触れる。


(公開日: 2025年04月04日)