大きな高圧力発生装置と新物質相開拓
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp講演言語 : 日本語
高圧力は、構造相転移や高圧高温合成を通して新物質相を創生する手段であるとともに、基底状態を連続的に変化させ量子相転移やエキゾチック量子電子相を研究するための重要な物性研究ツールです。これまでに様々な超高圧発生装置が開発され、10万気圧を超えるような高圧下実験環境はかなり普及してきました。特に、近年の水素化合物超伝導やニッケル酸化物高温超伝導体候補物質の発見は、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)による測定技術の成熟によると思われます。一方で、DACは極端に小さな試料を圧す装置であることから実験上の制約が大きく、実践的な電子物性研究のためにより幅広いアプローチが求められています。我々は、大きな試料室体積、容易な配線と光学測定を両立する高圧力発生装置を開発し、10万気圧級の核磁気共鳴測定と精密磁化測定を実現してきました。これらの技術は、圧力誘起のエキゾチック超伝導や量子スピン液体研究にある程度有用でしたが、たくさんの候補物質から新電子相を発見するには、より機能的で機動的な高圧装置/測定技術が必要と考えます。本講演では、これまでの研究内容に加え、現在建造中の、巨大な試料室と先端測定手法を兼ね備えた装置を紹介します。ここ数年で高圧下でも実用性が示されつつある光検出磁気共鳴法を組み合わせることにより、超伝導相探索や量子磁性研究を大きく加速させる予定です。
【講師紹介】
北川健太郎先生は4月に物性研に着任されました。過去には、物性研瀧川研究室でポスドク研究員としても研究しておられ、この度古巣に帰ってこられた、という形になります。北川先生は、独自開発の高圧力発生装置と光学・磁気共鳴測定技術を組み合わせ、超高圧力下でのオリジナリティの高い新電子相の研究を行っておられます。今回は着任の機会に、ご研究分野の紹介とともに、物性研での研究の展開に関する抱負をお話しいただきます。