Home >  ニュース > 中辻 知教授と酒井明人助教、日本物理学会論文賞を受賞

中辻 知教授と酒井明人助教、日本物理学会論文賞を受賞

中辻知教授と同研究室の酒井明人助教が日本物理学会の第23回(2018年)論文賞を受賞しました。この賞は物理学の進歩に重要な貢献をした者に授与されるものです。

受賞した中辻知教授(左)と酒井明人助教(右)
受賞した中辻知教授(左)と酒井明人助教(右)

受賞対象となった論文は”Kondo Effects and Multipolar Order in the Cubic PrTr2Al20 (Tr = Ti, V)”です。

四極子近藤効果は、電気四極子の自由度を持つ局在電子が伝導電子と混成することによりもたらされる多体効果の一つです。磁気モーメントに由来する従来型の近藤効果の拡張として、約30年前に理論的に提案されていました。その後、この現象の実験的観測を目指して物質探索が行われたものの、実験的確証は得られていませんでした。

このような研究の流れの中、著者らはPrイオンが格子を形成した1-2-20 化合物系において、四極子自由度に起因すると考えられる強相関電子物性を発見しました。そして四極子秩序の高温側で、温度の平方根に比例する電気抵抗率などの特異物性を観測し、四極子近藤効果に起因する非フェルミ液体的振る舞いである可能性を指摘しました。この測定に使用されたPrTi2Al20単結晶は、同グループにより育成されたもので、純良であったことが、種々の物理量の測定精度を高くし、信頼性の高い結果を得ることに繋がりました。

本論文の出版以降、中性子非弾性散乱による四極子自由度を持つPr結晶場基底状態の確認や、異常な圧力誘起超伝導相の発見などの様々な実験が行われました。また、理論的研究でも四極子近藤効果の格子系にも拡張がなされました。

以上のように、四極子近藤格子系の実験的研究の舞台となる新化合物を見出し、その後の本研究領域の進展をもたらしたことが、高く評価されました。

対象論文

関連サイト
(公開日: 2018年04月02日)