山田正理氏(長谷川研 研究員)らが日本表面真空学会 論文賞(学術部門)を受賞

長谷川研究室の山田正理氏(東京大学物性研究所 研究員)、佐藤優大氏(博士3年、現在:ポスドク(Ludwig-Maximilians-Universität München))、土師将裕氏(東京大学物性研究所 助教)、長谷川幸雄氏(東京大学物性研究所 教授)が、2026年度 日本表面真空学会 論文賞(学術部門)(熊谷寛夫記念論文賞)を受賞しました。
同賞は、日本表面真空学会が発行する邦文誌「表面と真空」、欧文誌「e-Journal of Surface Science and Nanotechnology」に、過去2年間に掲載された原著論文のうち、この分野の進歩発展に大きく寄与したと認められるものに授与される賞です。9月15日に「ビッグパレットふくしま」で開催された日本表面真空学会学術講演会にて、授賞式が行われました。
受賞対象となった論文は「Simple Model for Striped-incommensurate Phase Formed by Pb Adsorption on Si(111)」です。
Si(111)面上に鉛(Pb)をほぼ一層蒸着したときに得られるStriped-incommensurate (SIC)相は、低温で超伝導に転移するなど興味深い物性を示します。しかしその構造解析は、不整合(incommensurate)という名のとおり、明確な単位格子が定義できず、また近似するにしても大きな格子が必要になるなど困難を伴います。
本研究では、Si(111)表面と整合するPbの仮想的√3 x√3吸着構造から出発し、そこに内在する強い圧縮応力を如何に緩和するかという観点から、剛体球モデルを用いてSIC相の構造を考察しました。その結果、[-110]方向にPb吸着層を一軸的に4.2%膨張させ、さらに[11-2]軸を含む映進面を持つようなわずかな双晶変形を起こさせることにより、表面上の多くのPb原子が安定サイトを占め、かつ圧縮応力も緩和された安定構造ができることを見いだしました。このモデル構造は、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて得られた実験画像の特徴を、非常に良く再現しました。同様に3.7%の一軸性膨張とわずかな双晶変形を取り入れたモデルは、ロシアのグループから近年報告された別の再構成表面の実験及び計算データを再現することに成功しました。
剛体球モデルは、構成元素の原子半径のみをパラメータとする単純なモデルですが、不整合系だけでなく、再構成により原子数が変化する開放系にも適用可能です。本研究は単にSi(111)-Pb-SICという一つの構造を解析したというにとどまらず、他の解析困難な表面構造に対して優れた第一次近似を与える手法としての汎用性が高く評価され、今回の受賞に至りました。