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愛知県田口鉱山から新鉱物・堀石(Horiite)を発見 ー日本の鉱物学を支えた堀秀道博士への献名ー

東京大学物性研究所の浜根大輔 技術専門職員は、鉱物研究家の井上真治氏らとの共同研究により、愛知県田口鉱山で新鉱物・堀石(学名:Horiite、読み:ホリアイト)を発見しました。堀石は国際鉱物学連合(IMA)新鉱物・命名・分類委員会(CNMNC)により新種(新鉱物)として正式に承認されており、研究成果は学術誌Journal of Mineralogical and Petrological Sciencesに2026年6月16日付(現地時間)で掲載されました。

研究概要

堀石は、理想化学組成Ba2Mn2Mn4Ti2(Si2O7)2(PO4)2O2(OH)2で表される新鉱物です。その結晶構造はマンガン(Mn)を中心とする八面体が三角格子状に配列して二次元的なシートを形成し、その間に別の構造ブロックが挟み込まれた層状構造を特徴としています(図1)。この構造は、部分的にはセイドゼライト石超族に該当する特徴を持ちますが、全体としては既知の鉱物や合成物質では未確認の、新しい構造でした。この発見は、結晶構造が持つ多様性に新たな実例を加えるものであり、鉱物学および結晶化学の発展に寄与する成果といえます。

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図1 堀石の標本(左)とその結晶構造(右)。標本中、光を反射する橙色部が堀石。

発見の経緯

発見の契機は2024年11月、鉱物研究家の井上真治氏が浜根大輔 技術専門職員に対して鉱物の同定を依頼したことでした。これをきっかけに、山口大学の永嶌真理子 若手先進教授、兵庫県立大学の森祐紀 助教、ならびに鉱物研究家らを加えた共同研究チームが発足し、詳細な調査が始まりました。対象となった鉱物は、既知鉱物であるヘイトマン石(Hejtmanite)に外観がよく似ていました。しかし、故・堀秀道博士は、生前に「ヘイトマン石とは異なる未知の鉱物である可能性」を井上氏へ指摘していました。

研究チームは、電子顕微鏡による観察をはじめとする多角的な鉱物学的検討を実施しました。その結果、この鉱物が既存のどの鉱物種とも異なる新種(新鉱物)であることが明らかとなり、堀博士の着想が科学的に裏付けられました。

名称の由来

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図2 故 堀秀道博士(写真:ご遺族提供)

堀石は、日本の鉱物学の発展と普及に尽力した堀秀道博士(1934-2019)にちなみ命名されました(図2)。堀博士は中学生時代から鉱物採集に親しみ、キエフ大学およびモスクワ大学への留学を経て鉱物学を修めました。これまでに5種の新鉱物発見に携わり、東北大学から理学博士号を授与されています。また、「石の鑑定士」としてテレビや各種メディアに多数出演し、鉱物の魅力を広く社会へ伝える活動にも尽力しました。このように研究と普及の両面の活動から日本の鉱物学を支えた功績をもって、日本鉱物科学会の名誉会員にも選出されています。

今回、鉱物の同定を依頼した井上氏は、堀博士が設立した鉱物科学研究所(現ホリミネラロジー)で長年活動してきた門下生の一人です。今回の命名には、未知鉱物の存在を見抜いた堀博士の先見性への敬意と、長年にわたる指導への感謝の思いが込められています。

今後の展開

2026年9月26日(土)に開催される日本鉱物科学会年会の一般普及講演会では、「新鉱物」をテーマとした講演が予定されており、本研究成果である堀石についても紹介される予定です。

講演の詳細や参加方法については、後日、日本鉱物科学会年会のウェブサイトで公表されます。研究者や鉱物愛好家のみならず、広く一般の皆さまのご参加をお待ちしております。

研究グループ構成員

  • 浜根大輔(東京大学物性研究所 技術専門職員)
  • 永嶌真理子(山口大学創成科学研究科 若手先進教授)
  • 森祐紀(兵庫県立大学理学研究科 助教)
  • 大西政之(鉱物研究家)
  • 石坂智裕(鉱物研究家)
  • 井上真治(鉱物研究家)

発表論文

  • 雑誌名:Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
  • 論文タイトル:Horiite, Ba2Mn2Mn4Ti2(Si2O7)2(PO4)2O2(OH)2, a new mineral of bafertisite group in seidozerite supergroup, from the Taguchi mine, Aichi Prefecture, Japan
  • 著者: Daisuke NISHIO–HAMANE, Mariko NAGASHIMA, Yuki MORI, Masayuki OHNISHI, Tomohiro ISHIZAKA, Shinji INOUE
  • DOI: 10.2465/jmps.260301

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(公開日: 2026年06月16日)