梅山裕史氏(吉信研D3)が日本物理学会の学生優秀発表賞を受賞
吉信研究室の梅山裕史氏(東京大学大学院 理学系研究科 化学専攻 博士課程3年)は、3月23日〜26日にかけてオンライン開催された日本物理学会2026年春季大会において、学生優秀発表賞(領域9:表面・界面、結晶成長)を受賞しました。同賞は日本物理学会において、優れた講演発表を行った学生に対して授与されるもので、研究内容と発表の両面が審査されます。
受賞対象となった発表タイトルは「超短パルスレーザー加工により作製したグラファイトエッジ表面の電子状態・化学反応性:放射光X線光電子分光、X線吸収分光、及びDFT計算による研究」です。
グラファイトは炭素原子が蜂の巣状に配列した層状物質であり、ゴム補強材、電池材料、触媒担体など幅広い分野で利用されています。特に、グラファイトの端に相当するエッジ表面は、層の平坦な面である基底面とは異なる局所電子状態や高い化学反応性を示すことが期待されていますが、実在のバルクグラファイトにおいてエッジ表面のみを選択的に測定することは容易ではなく、その電子状態と反応性の実験的理解は十分ではありませんでした。
本研究では、超短パルスレーザー加工により高配向性熱分解グラファイト(HOPG)にエッジ表面を作製し、放射光顕微X線光電子分光、顕微X線吸収分光、及び密度汎関数理論(DFT)計算を組み合わせることで、グラファイトエッジ表面の電子状態と化学反応性を調べました。その結果、エッジ表面ではフェルミ準位近傍に電子状態密度が存在すること、またC 1s(炭素原子の内殻)光電子スペクトルにエッジ特有の低束縛エネルギー成分が現れることを明らかにしました。さらに、炭素K吸収端X線吸収スペクトルでは、エッジ表面に特有の低エネルギー非占有状態が観測され、DFT計算との比較から、水素終端ジグザグエッジに局在した電子状態が重要な役割を果たすことが示唆されました。
カーボンブラックなどグラファイト粉末についての従来研究では、エッジ面が基底面と混ざった状態で観測され、その電子状態・化学状態が議論されていました。本研究では、高真空中のレーザー加工により、バルクHOPG試料の基底面に垂直なサブミリメートルサイズのエッジ面を作製し、エッジ面だけを顕微放射光分光により選択的に観測することに成功しました。エッジ表面に由来する電子状態について、放射光分光と第一原理計算を組み合わせて梅山裕史氏が主体的に解析し、研究内容を明確に伝えた発表が評価され、学生優秀発表賞の受賞につながりました。
