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小田達郎助教(眞弓研)が日本中性子科学会奨励賞を受賞

眞弓研究室の小田達郎助教は、第22回(2024年)日本中性子科学会奨励賞を受賞しました。同賞は、中性子科学に関して優秀な研究を発表した若手研究者に贈られるものです。授賞式は12月4日から6日にかけて名古屋国際会議場で開催された日本中性子科学会第24回年会にて行われました。

受賞対象となった研究は「中性子共鳴スピンエコー分光法の開発とその応用に関する研究」です。

日本中性子科学会奨励賞

奨励賞を受賞した小田達郎助教(右)

中性子スピンエコー法は数ナノから数100ナノメートルの構造におけるナノ秒オーダーのダイナミクス観察が可能な分光法です。スピン自由度を利用することで、中性子分光法のなかでは最も高いエネルギー分解能を実現しています。

小田助教は,京都大学原子炉実験所/複合原子力科学研究所に在籍中、J-PARC MLF BL06 に設置された中性子スピンエコー分光器の開発プロジェクトに参加、ビームライン建設のための中性子導管の輸送効率や遮蔽性能の数値シミュレーションを行い、ビーム受け入れ後には性能評価試験を行いました。また、仏国Laue-Langevin研究所において、MIEZE 型と呼ばれるスピンエコー分光法をパルス中性子と組み合わせた場合の特徴について議論を行い、パルス幅が十分に狭ければスピンエコー観測条件の制約が緩和されることを実証しました。

同氏はLaue-Langevin研究所で得られた実証結果に基づき、MLF BL06においてスピンフリッパーの調整方法を工夫することで、高周波MIEZE スピンエコー信号の観測に成功しました。加えて、エコー信号の位相の波長依存性を解析し、実効振動数シフトとの関係を明らかにしました。この関係の解明は、分光器の調整に役立つ知見であるとともに、高分解能測定のために必要な大面積検出器で生じる幾何学的な位相むらの補正も可能になることを実証しました。また、外部磁場下での測定が可能であるというMIEZE 型スピンエコー分光法の特徴を活かして、磁気スキルミオン系のダイナミクスの測定を共同研究者とともに行い、波数によるダイナミクスの違いの解明に導きました。

MLF BL06の装置開発に深くかかわり、MIEZE 型スピンエコー分光法による磁気ダイナミクス測定が可能となるに至るまで多大な貢献をした実績が評価され、奨励賞の受賞に至りました。

関連論文

  1. “Direct observations of spin fluctuations in hedgehog–anti-hedgehog spin lattice states in MnSi1−xGex (x=0.6 and 0.8) at zero magnetic field”, Phys. Rev. B 108, 054445 (2023)
  2. “Phase correction method in a wide detector plane for MIEZE spectroscopy with pulsed neutron beams”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A 1012, 165616 (2021)
  3. “Crystallization of magnetic skyrmions in MnSi investigated by neutron spin echo spectroscopy”, Physical Review Research 2, 043393 (2020)
  4. “Tuning Neutron Resonance Spin-Echo
    Spectrometers with Pulsed Beams”, Physical Review Applied 14, 054032 (2020)

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(公開日: 2024年12月18日)