山岡良太氏(中島研M1)が日本中性子科学会ポスター賞を受賞
中島研究室の山岡良太氏(修士課程1年生)は、12月4日から6日にかけて名古屋国際会議場で開催された日本中性子科学会第24回年会においてポスター賞を受賞しました。同賞は、同学会のポスターセッションの発表の中で審査に応募した35件の中から選ばれた、特に優秀な発表3件に授与されるものです。
受賞対象となった発表は「偏極・非偏極中性子散乱によるファンデルワールス磁性体CrNb4Se8の磁気秩序の研究」です。
ファンデルワールス物質は2次元的な原子層が積層した構造を持ち、これを剥離して単相を取り出したり、捻りを加えて積層させることや、対称性の異なる原子層を重ねたりすることで新しい物性現象を生み出すことができる舞台として注目を集めています。この原子層にスピン自由度も加えることで多彩な交差相関が実現することが期待され、近年では磁性イオンを含むファンデルワールス物質(ファンデルワールス磁性体)が盛んに研究されています。
山岡氏は、近年バルク単結晶が新たに合成されたファンデルワールス磁性体の一つであるCrNb4Se8について、研究用原子炉JRR-3に設置された偏極中性子三軸分光器PONTAを用いて結晶構造と磁気構造を研究しました。この物質はNbSe2原子層の間に挿入されたCr原子が三角格子を形成していることが知られていましたが、山岡氏の研究により各原子位置やボンド角が精密化され、基底状態における磁気構造も決定されました。さらに磁気反射プロファイルの温度変化などからこの系の磁気的相互作用についても議論されており、これらの結果はこの物質を薄膜・単層化した際の磁気的な振る舞いを検討する上でも指針を与えるものになると期待されます。