白井亜美氏(松永研D1)がシンポジウム「テラヘルツ科学の最先端XI」で優秀学生発表賞を受賞
松永研究室の白井亜美氏(博士後期課程1年生)は、10月17日〜18日にかけて福井大学文京キャンパスで行われたシンポジウム「テラヘルツ科学の最先端XI」において、優秀学生発表賞を受賞しました。同賞はテラヘルツ科学の最先端シンポジウムにおいて、テラヘルツ科学およびその関連分野に関する優れた研究成果を得た者を表彰するものです。
受賞対象となった研究は「偏光分解テラヘルツ分光法を用いたシリコンのバレー及び軌道自由度が与える伝導特性の研究」です。
現代エレクトロニクスは半導体の電荷を制御してキャリアを輸送することによって成り立っていますが、キャリアが持つスピン自由度を利用したスピントロニクス研究も盛んに行われています。特に、電荷の流れ(電流)とスピンの流れ(スピン流)の相互変換を可能にするスピンHall効果及び逆スピンHall効果が非常に重要な役割を果たしています。しかし、半導体産業の代表物質であるシリコンは、スピン軌道相互作用が小さいためスピンHall効果が非常に小さく、そのためスピントロニクス素子としての研究ではあまり注目されていないのが現状です。
白井氏は、シリコンにおいて運動量空間におけるバレー自由度や軌道角運動量自由度に注目しました。直線偏光や円偏光を駆使して、間接遷移バンドギャップ端にキャリアを励起して、その時に生じる伝導度の異方性をテラヘルツ波で計測する実験を行うことで、バレーや軌道の自由度に由来すると考えられる応答とそのダイナミクスを初めて捉えることに成功しました。この成果は、室温においてシリコンのキャリアが持つバレーや軌道の自由度が伝導特性に与える影響をテラヘルツ技術を駆使して初めて明らかにしたものとして、高く評価され、同賞の受賞に至りました。
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