島村勇德特任助教(原田研)が16th International Conference on X-Ray MicroscopyでWerner Meyer-Ilse Memorial Awardを受賞
原田研究室の島村 勇德特任助教は、現地時間8月12日から16日にかけてスウェーデンのルンド大学で行われた16th International Conference on X-Ray Microscopy (XRM2024)において、Werner Meyer-Ilse Memorial Award (2024)を受賞しました。同賞は、X線顕微鏡の技術・応用において飛躍的な成果をあげ、同学会で口頭発表を行った博士号取得見込みあるいは取得後2年以内の研究者に贈られるものです。
受賞内容は、「色収差のない軟X線プローブと超小形Kirkpatrick-Baezミラーに関する研究」です。
バイオ・医用分野では、生体物質の構造や機能を分子レベルで理解し、活用します。こうした現象を塊の試料中で透視観察できるのがX線です。中でも軟X線域(波長4ナノメートルから0.6ナノメートル)は、生体物質の多くを占める軽元素・軽金属の電子と相互作用し、原子・分子に関わる電子の情報を明らかにできます。電子情報を局所的に観察するためには、軟X線を微細な点に集めてプローブを形成する必要がありますが、強度と微細さを両立したプローブ形成は困難でした。
島村特任助教は、従来の軟X線用のレンズにかわる新設計の軟X線集光ミラーを提案しました。集光ミラーは集光強度が高く理想的ですが、作製精度を満たすことが極めて困難なため、微細な軟X線プローブの形成には現実的ではありませんでした。同特任助教は、光学設計と作製プロセスの観点から新たな集光ミラ―を設計、開発しました。また、作製したミラーの集光性能を評価し、世界で初めて軟X線の理想的な集光を実現しました。集光ミラーの活用により、従来困難だったナノスケールでの軟X線蛍光顕微観察が可能となり、化学固定された神経細胞中の元素分布を濃度・量の点で可視化にも成功しました。試料の厚みや元素濃度は、現在同手法でのみナノスケールで分析できます。開発した分析手法やプローブは、超伝導・新型トランジスタ等の先端材料やデバイスの評価にも活用できるとして注目を集めています。
新たな集光素子を開発して従来困難だった軟X線プローブを形成した技術的な点、および、顕微鏡として応用して新たなX線顕微観察手法を提案し、神経細胞に応用した点が「X線顕微鏡の技術・応用における飛躍的な成果」であると評価され、同賞の受賞に至りました。
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