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量子臨界二次元ボーズ気体の実現

発表のポイント

  • 磁性体YbCl3の磁気励起が、飽和磁場において、稀薄極限(量子臨界)二次元マグノンボーズ気体として振舞うことを発見
  • 熱力学・熱輸送特性から、ボソン間斥力の減少など2次元系特有の振舞いを確認
  • 飽和磁場以下の磁場において、ごくわずかな二次元面間の相互作用の助けを借りて、ボーズアインシュタイン凝縮(BEC)を生じる
  • 本物質を舞台に、2次元ボーズ気体の新現象探求本格化が期待される

独マックスプランク固体研究所の研究者らと東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の北川健太郎講師(研究当時、現物性研究所准教授)は、国際共同研究により、ハイゼンベルグ磁性体YbCl3を用いて、飽和磁場近傍における熱力学的性質、比熱と磁化を調べました。その結果、同磁性体が希薄極限における量子臨界(注1)2次元ボーズ気体として驚くほど正確に記述されることを発見しました。

この2次元極限で実現したボーズアインシュタイン凝縮(BEC)(注2)ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(BKT)転移(注3)の兆候を示す特徴が有るのか、またさらに新奇な状態の可能性はあるのか、今後、本物質を舞台として、2次元ボーズ気体におけるさらなる新現象の探求が本格化することが期待されます。

本成果は現地時間5月9日、英科学誌「Nature Physics」に掲載されました。

マックスプランク固体研究所のニュース

アイキャッチ図

図:希薄ボソンのイメージ図© MPI FKF

論文情報

  • 雑誌 : Nature Physics
  • 題名 : A quantum critical Bose gas of magnons in the quasi-two-dimensional antiferromagnet YbCl3 under magnetic fields
  • 著者 : Yosuke Matsumoto, Simon Schnierer, Jan A. N. Bruin, Jürgen Nuss, Pascal Reiss, George Jackeli, Kentaro Kitagawa & Hidenori Takagi
  • DOI : s41567-024-02498-w

用語解説

(注1)量子臨界 :
量子ゆらぎによって起こる量子相転移が発生する条件を量子臨界点という。量子臨界点近傍では、強い量子ゆらぎによってさまざまな新奇現象が生じるが、そのような現象が発生しうる状態を量子臨界という。
(注2)ボーズアインシュタイン凝縮(BEC) :
ある転移温度以下で大量のボーズ粒子が最低エネルギー状態に落ち込む相転移現象。粒子系全体がほとんど一つの状態に凝縮する。
(注3)ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(BKT)転移 :
2次元系における特殊な相転移。

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(公開日: 2024年05月13日)