尾崎泰助教授が文部科学大臣表彰「科学技術賞 研究部門」を受賞
尾崎泰助教授は4月9日、令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞しました。同賞は、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った研究者に贈られる賞です。表彰式は4月17日、文部科学省3階講堂にて盛山文部科学大臣臨席のもと行われる予定です。
受賞対象となった功績は「密度汎関数理論に基づく大規模電子状態計算手法に関する研究」です。
第一原理電子状態計算は、電子デバイス、触媒、磁石材料などの物質・材料の物性解明に広く用いられています。その汎用性から、物質デザインにおいても重要な役割を果たしていますが、高精度・高速計算手法とソフトウェアの開発は依然として大きな課題であり、また、日本で開発された国際的なソフトウェアは限られています。
尾崎教授は、汎用性の高い原子様基底関数法および高精度ノルム保存型擬ポテンシャル法を開発し、計算効率・精度の向上を実現しました。さらに、局在自然軌道に基づくオーダーN分割統治法、修正再帰二分法による領域分割法、最小通信量を持つ高速フーリエ変換並列化法、内殻電子の絶対束縛エネルギーの高精度計算手法など、さまざまな計算手法を開発しました。
開発した各種計算手法により、現実物質に即した高精度・大規模計算が実現され、実験結果と直接比較可能なシミュレーションが可能になりました。これらの成果は汎用ソフトウェアOpenMXに実装され、二次元物質、スピントロニクス材料、トポロジカル物質などの研究に国際的に活用されています。
一連の研究が、物質科学の非経験性の進展に寄与し、材料科学における実験と理論のギャップを埋め、文明社会の発展に役立つ材料発見の加速に寄与することが期待される成果であると認められ、同賞の受賞に至りました。
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