櫻井快氏(木村研D1)が日本放射光学会のJSR2024学生発表賞を受賞
木村研究室の櫻井快氏(博士後期課程1年生)は、1月10日〜12日にアクリエひめじで行われた第37回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにおいてJSR2024学生発表賞を受賞しました。同賞は、日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにて、将来性・独創性のある優秀な発表を行った学生に授与されるものです。
受賞対象となった発表は、「細胞の軟X線XAFSタイコグラフィ計測と主成分分析によるスペクトル解析」です。
細胞内における化学状態のイメージングは、オルガネラの機能や代謝反応を理解する上で重要です。細胞内に含まれるたんぱく質、核酸、糖類などの有機物は、主に炭素、窒素、酸素などの軽元素で構成されています。軟X線吸収分光法は強力な軽元素の化学状態分析手法であり、吸収スペクトルに見られる微細構造(XAFS)から元素特異的に化学状態を推定することができます。この手法を高分解能イメージング技術であるタイコグラフィと組み合わせた軟X線XAFSタイコグラフィ法を利用することで、数10 nmの空間分解能での吸収スペクトル画像(ハイパースペクトル画像)の計測及び化学状態の推定が可能となります。
櫻井氏らは、SPring-8 BL07LSUにて所属研究室で開発した軟X線タイコグラフィ装置CARROTを用いて、哺乳類細胞の軟X線XAFSタイコグラフィ計測を行い、細胞内での化学状態分布の計測に成功しました。CARROTでは、全反射現象を利用したX線ミラー光学系を採用しており、これによりXAFS計測に必要な幅広い波長域での迅速なイメージングを可能にしています。吸収スペクトルの主成分分析により、ハイパースペクトル画像に含まれる特徴的なスペクトル構造を抽出し、細胞内での窒素や酸素の化学状態の違いを50 nmに迫る高空間分解能でマッピングできることが分かりました。
本手法は従来の顕微手法では計測困難であった細胞内構造の識別の他、細胞内での薬剤分布や代謝反応の計測などへ活用が期待されます。これらの研究成果と優れた発表が評価され、同賞が授与されました。