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吉永享太氏(木村研M2)が精密工学会秋季大会でベストプレゼンテーション賞を受賞

木村研究室の吉永享太氏(修士課程2年生)は、2023年9月13日〜15日に福岡工業大学で行われた2023年度精密工学会秋季大会学術講演会においてベストプレゼンテーション賞を受賞しました。同賞は35歳までの若手発表者のうち、研究の新規性・発表内容、発表の構成・方法、適切な質疑応答が優秀だった発表者に贈られます。

受賞対象となった研究は「軟X線高速分光イメージングに向けた超高速電子線描画装置による超高刻線密度回折格子の開発」です。

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2023年度精密工学会秋季大会
ベストプレゼンテーション賞を受賞した吉永享太氏

軟X線分光イメージングとは、物質中の電子とX線の強い相互作用を利用したイメージング技術です。試料の内部構造を化学状態と併せて可視化できるため、生物・非生物問わず多様な試料に対する有用な物性分析手法として広く用いられています。しかし、従来手法の多くは色収差などの光学系上の制約により、X線ビームのエネルギー走査が必要であり測定に長時間を要したため、準定常状態の試料のイメージングにとどまっていました。高速で化学状態や構造が変化する試料を追跡できる軟X線高速分光イメージングを実現できれば、これまで観察できなかった実デバイスの動作機構や生体反応を可視化でき、幅広い応用が期待されます。

吉永氏らのグループでは、軟X線高速分光イメージングを実現する新たな光学系を提案し、その基盤要素であるマルチ開口回折格子の設計開発・評価を行いました。マルチ開口回折格子とは2次元平面上に多数の回折格子が配置された構造をもちます。色収差がなく高速で試料像の取得が可能なX線顕微鏡とマルチ開口回折格子を組み合わせることで、X線ビームのエネルギー走査なしにX線分光イメージングを実現できます。

同氏は、マルチ開口回折格子の設計・作製からX線を用いた評価実験までを一貫して行いました。マルチ開口回折格子はその回折格子のエネルギー分解能を高めるために不等間隔回折格子として設計され、200 nm厚のSiN薄膜をもつSiウェハから半導体プロセスを利用して作製されました。各回折格子の溝は武田スーパークリーンルームの超高速電子線描画装置によってSiN薄膜上に作製され、200 nm周期の超高刻線密度回折格子を得ることに成功しました。さらに、SPring-8軟X線ビームラインBL07LSUで放射光を用いた分光実験を行い、回折格子の作製精度とその性能を評価しました。本実験結果から、各回折格子の高い作製精度が保証されエネルギー分解能500をもつsub-µs時間分解能の高速X線分光イメージングを実現できることを示したことが評価され、受賞に至りました。

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(公開日: 2024年02月22日)