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さまざまな磁性元素を含む新しい超伝導体ファミリーの発見

東京大学物性研究所の岡本 佳比古 教授、名古屋大学大学院工学研究科の篠田 祐作 大学院生(研究当時)、平井 大悟郎 准教授、竹中 康司 教授の研究グループは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の松本 遥 大学院生、名古屋大学大学院理学研究科の山川 洋一 講師と協力して、異なる磁性元素をもつ7個の新しい超伝導体を発見しました。本研究成果は、Journal of the Physical Society of Japan電子版に、2023年8月31日付で掲載され、注目論文(Papers of Editors’ Choice)に選ばれました。

物質の電気抵抗が低温で完全にゼロになる超伝導と、物質の磁石としての性質である磁性には一筋縄ではいかない関係があります。一般に、強い磁性が働くと超伝導は壊されるため、鉄などの磁性元素を含む物質において超伝導が現れることは多くありません。しかし、そのような磁性元素を含む物質ではごくまれに、通常の物質では決して現れない高温における超伝導や、既存の理論では説明できない変わった性質をもつ超伝導が現れることがあります。このような超伝導と磁性の複雑な関係を明らかにすることは、例えば室温超伝導の実現にとっても重要と思われますが、未だに達成されていません。これまでにない特徴をもつ新超伝導体の発見が、超伝導と磁性の関係の解明にとって必要不可欠です。

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図. 左:Sc6MTe2の結晶構造.右:さまざまな磁性元素Mを含むSc6MTe2の電気抵抗率と、アーク溶融法により合成されたSc6FeTe2の多結晶試料

岡本教授らは、スカンジウム(Sc)、テルル(Te)と、ある磁性元素(Mと記す)からなる物質Sc6MTe2が、さまざまな磁性元素の場合に超伝導となることを発見しました。この新超伝導体ファミリーの特徴は、鉄、コバルト、ニッケルなどの7種類もの磁性元素Mの場合に超伝導となることにあります。磁性元素の種類によって超伝導の性質は変化し、鉄の場合に最も高い温度4.7ケルビンで超伝導を示しました。同じ結晶構造をもつ親戚の物質でありながら、このようにさまざまな磁性元素をもつ物質で超伝導を示す例はこれまでほとんど知られていません。今後、この超伝導体ファミリーの研究が、磁性元素を含む超伝導体の完全解明に貢献すると期待されます。

発表論文

  • 雑誌名:Journal of the Physical Society of Japan
  • 論文タイトル:Superconductivity in Ternary Scandium Telluride Sc6MTe2 with 3d, 4d, and 5d Transition Metals
  • 著者:Yusaku Shinoda, Yoshihiko Okamoto, Youichi Yamakawa, Haruka Matsumoto, Daigorou Hirai, Koshi Takenaka
  • DOI:https://doi.org/10.7566/JPSJ.92.103701

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(公開日: 2023年09月01日)