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フラストレート磁性体の新たな多段相転移を発見 ー未踏超強磁場領域での直接磁化検出ー

附属国際超強磁場科学研究施設小濱研究室D3の厳正輝氏 (現在:理化学研究所・基礎科学特別研究員) は、電気通信大学、大阪大学、岡山大学と共同で、フラストレート磁性体LiGaCr4O8の600テスラまでの多段磁気相転移を明らかにすることに成功しました。本研究成果は、オープンアクセスの米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に2023年8月7日付で掲載されました。

100テスラを大きく上回る極限超強磁場環境は、未知の物理現象の宝庫です。近年、東京大学物性研究所が世界に誇る電磁濃縮法磁場発生装置を利用した研究により、超強磁場下における金属-絶縁体転移や新規量子凝縮相などが次々と発見されています。図1に示すように、電磁濃縮法ではマグネットコイルに大電流を流して初期磁束を金属製の筒により瞬時に濃縮することで、パルス超強磁場を発生させます。本研究では、従来このような超強磁場環境では困難とされていた磁化の直接検出手法を新たに開発しました。図1(a)上に今回デザインしたプローブの模式図を示しており、試料磁化の時間変化を同軸型の磁化検出コイルにより誘導電圧として検出します。磁場の空間分布依存性が複雑、かつ高磁場になるほど磁場発生空間が狭くなる電磁濃縮法においても、外部磁場の変化に伴うバックグラウンド電圧の検出を極力抑えられる設計になっています。

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図1:(a)電磁濃縮法による磁場発生と本研究で開発した磁化検出プローブの模式図。(b)ボンド交替型パイロクロア格子。(c)LiGaCr4O8の超強磁場磁化過程。©CC-BY

この新たなプローブを用いて、図1(b)のような結晶構造を持つパイロクロア格子系物質LiGaCr4O8の磁場誘起相転移を調べました。その結果、図1(c)に示すように150〜200テスラにかけて二段階の磁化のとびを示し、磁化プラトー状態へ入っていくことが明らかになりました。理論計算との比較から、磁化プラトー直前の中間磁場領域では3次元的な新規磁気クラスター超構造の発現が示唆されます。これは、LiGaCr4O8に特有のボンド交替とスピン-格子結合という2自由度の掛け合わせで実現する現象であると考えられます。強い磁気フラストレーション状態において生じる摂動効果の新たな側面を垣間見たかもしれません。

発表論文

  • 雑誌名:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
  • 論文タイトル:Signatures of a magnetic superstructure phase induced by ultrahigh magnetic fields in a breathing pyrochlore antiferromagnet
  • 著者: M. Gen, A. Ikeda, K. Aoyama, H. O. Jeschke, Y. Ishii, H. Ishikawa, T. Yajima, Y. Okamoto, X.-G. Zhou, D. Nakamura, S. Takeyama, K. Kindo, Y. H. Matsuda, and Y. Kohama
  • DOI;https://doi.org/10.1073/pnas.2302756120

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(公開日: 2023年08月08日)