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重いアニオン遷移金属ハニカム格子をもつ超伝導物質の発見

東京大学物性研究所の石川孟助教、矢島健助教(現:名古屋大学 准教授)、浜根大輔技術職員、今城周作特任助教、金道浩一教授、河村光晶助教(現:東京大学情報基盤センター 特任講師)らは、ランタン(La)、ヨウ素(I)、オスミウム(Os)という3種類の重い元素が層状に積み重なった結晶構造をもつLa2IOs2という物質を合成し、12ケルビン以下の温度で超伝導を示すことを発見しました。

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図1 La2IOs2の結晶構造(左)と電気抵抗率の温度依存性(右)。12ケルビンで電気抵抗がゼロとなる超伝導転移を示し(赤)、12テスラの強い磁場中でも超伝導が生き残っている(青)。

超伝導物質はある温度以下で電気抵抗がゼロとなる物質で、エネルギー技術、医療機器、量子デバイスなどにおいて重要な役割を担う物質です。一般に超伝導は水素などの軽い元素を多く含む物質においてが実現しやすいと考えられており、重い元素のみから構成される物質が10ケルビンを超える温度で超伝導を示すことは非常に稀といえます。また、La2IOs2では10テスラを超える強い磁場中でも超伝導が生き残ることや、超伝導に前駆する相転移が存在するといった、一般的な超伝導物質とは大きく異なる性質をもつことを見出しました。特異な超伝導状態の実現には、元素が重くなるにしたがって強くなるスピン軌道相互作用という相対論的効果が重要な役割を果たしていると考えられます。さらに、新材料として注目されるグラフェンと類似したハニカム格子を形成するオスミウムが、負の電荷をもつアニオン的な状態をもつことも分かりました。オスミウムを含む遷移金属とよばれるグループの元素では、正の電荷をもつカチオンとしての性質はよく知られていますが、アニオンとしての性質はほとんど分かっていません。本発見を契機に、重い遷移金属元素に特有な物理的・化学的性質を活用した新しい超伝導物質や材料の開発が進むと期待されます。

本研究の成果は2023年5月31日に、米国科学誌『Physical Review Materials』にオンライン掲載されました。

発表論文

  • 雑誌名:Physical Review Materials
  • 論文タイトル:Superconductivity at 12 K in La2IOs2: A 5d metal with osmium honeycomb layer
  • 著者:Hajime Ishikawa, Takeshi Yajima, Daisuke Nishio-Hamane, Shusaku Imajo, Koichi Kindo, Mitsuaki Kawamura
  • DOI:10.1103/PhysRevMaterials.7.054804

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(公開日: 2023年06月02日)