池野辺寿弥氏(廣井研D1)が日本物理学会学生優秀発表賞を受賞
附属物質設計評価施設 廣井研究室D1の池野辺寿弥氏が日本物理学会(領域8)の学生優秀発表賞を受賞しました。この賞は、日本物理学会春季大会で口頭発表を行った大学院生又は学生会員の優秀な発表に対し、授与されます。受賞は4月27日に通知され、授与式は2023年秋季物理学会(9/16-19)に行われる予定です。
受賞対象となった発表タイトルは「ノーダルライン半金属NaAlSiにおける表面超伝導の検証」です。
超伝導は転移温度以下で電気抵抗がゼロになる現象です。この性質により発熱の問題なく大きな磁場を発生できるので、MRIやリニアモーターカーなどに実用化されています。これまで超伝導は、結晶全体が1つの超伝導状態を示すと知られていました。一方、近年トポロジーという観点から結晶表面だけ異なる状態をとる物質の存在が明らかになっています。内部(バルク)が絶縁体、表面が金属(表面状態)であるトポロジカル絶縁体がその代表的な例です。この類推から表面状態が自発的に超伝導を発現する「表面超伝導」が理論的に予測されていましたが、およそ10年間、該当物質は発見されていませんでした。
そこで本研究では、理論的にバルクが半金属、表面が金属(表面状態)を示すと指摘されているノーダルライン半金属NaAlSiに着目し、極低温で電気抵抗測定および磁気トルク測定を実施しました。その結果、バルク超伝導と共存した表面超伝導の兆候を観測することに成功しました。さらに観測した表面超伝導は、バルク超伝導よりも磁場に対して壊れにくい性質を有していることも明らかになりました。
本研究成果は、表面状態が自発的に超伝導を発現する初めての例であり、今後の更なる研究で超伝導現象とトポロジーの理解に進展をもたらすと期待されます。