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金子隆威氏、森田悟史助教(川島研)、今田正俊氏が日本物理学会論文賞を受賞

近畿大学の金子隆威博士研究員 (元:川島研究室博士研究員)、川島研究室の森田悟史助教、豊田理化学研究所の今田正俊フェロー(兼:早稲田大学研究員教授、元:物性研究所教授) に第28回日本物理学会論文賞の受賞が決まりました。授賞式は、2023年9月18日に東北大学にて開催される日本物理学会にて行われます。この賞は、独創的な論文の発表により物理学の進歩に重要な貢献をした研究者に与えられるものです。

受賞対象となった論文タイトルは「Gapless Spin-Liquid Phase in an Extended Spin 1/2 Triangular Heisenberg Model」です。

量子スピン系を絶対零度まで温度を下げると、一次元系を除いた多くの場合、自発的に対称性が破れてスピンが凍結します。一方で、絶対零度まで冷やしてもスピンが凍結しない奇妙な状態が現れる可能性が1970年代に提唱されました。この状態は「量子スピン液体」と呼ばれ、現在でも高温超伝導体や量子コンピュータとの関連で盛んに研究が行われています。研究の初期段階では、スピンが三角格子を組むハイゼンベルグ模型が候補の一つとして考えられてきました。しかし、2000年代に、最近接相互作用しか持たない三角格子模型の基底状態は、量子スピン液体ではなく反強磁性状態であることが明らかになりました。

本論文は、この模型に10%程度の次近接相互作用を加えることで、量子スピン液体が相として安定的に存在することを数値計算により示しました。比較的大きいサイズまでの計算を高精度に行うため、パラメータの数が数千にも及ぶ大規模な変分モンテカルロ法を、物性研究所スーパーコンピュータとスーパーコンピュータ「京」を用いて実行しています。この結果は、量子スピン液体相が単純なスピン模型でも実現しうることを示唆しており、その後の関連する多くの研究が行われる契機となっています。

発表論文

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(公開日: 2023年02月17日)