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中川 真由莉(松永研D2)氏、シンポジウム「テラヘルツ科学の最先端IX」の最優秀若手研究者賞を受賞

松永研究室D2の中川真由莉氏がシンポジウム 「テラヘルツ科学の最先端IX」の最優秀若手研究者賞を受賞しました。このシンポジウムは、日本分光学会テラヘルツ分光部会、テラヘルツテクノロジーフォーラム、応用物理学会テラヘルツ電磁波技術研究会、電子情報通信学会テラヘルツ応用システム特別研究専門委員会が主催するもので、2022年11月17日に開催された本シンポジウムのポスター発表の中から学術の向上に貢献する優れた発表を行った40歳未満の者に最優秀若手研究者賞が授与されます。授賞は12月6日にオンライン公開されました。

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受賞対象となった発表は「フリーランニングパルスレーザーに適用可能な非同期サンプリング法におけるジッター補正法の開発」です。

携帯電話などの通信で使われる電波と人間の目に見える可視光の中間の周波数を持つ電磁波は、テラヘルツ波と呼ばれています。この周波数帯では物質の特徴を反映した様々な電磁応答が現れるため、テラヘルツ波を使った分光法の更なる発展が強く期待されています。

テラヘルツ分光として代表的な手法が、テラヘルツ時間領域分光法です。これは一つのフェムト秒超短パルスレーザーから出た光パルスをテラヘルツ発生用と検出用の二つに分割して使用します。しかしこの手法では、測定の周波数分解能を高めるためには非常に長い計測時間を必要とする難点があります。そこで、二つのフェムト秒超短パルスレーザーから出てきた光パルスをそれぞれテラヘルツ発生用と検出用に用いる、非同期サンプリング法が2005年に開発されました。これは高分解能の実験を高速に行うことが出来る画期的な手法ですが、二つの超短パルスレーザー間で生じる時間軸方向の揺らぎ(ジッター)が問題になります。これまではジッターを抑制するためにパルスレーザー内部の共振器長を精密に制御したり、もう一つの定常波光源を追加する手法が取られてきましたが、いずれも高度な制御技術や高価な実験設備が必要でした。

中川氏は、ジッターを抑制するのではなく、ジッターの情報を含んだ高周波信号をテラヘルツ波と同時に計測して、計測終了後に解析によってジッターの影響を補正するという、独創的なアイデアで研究を進めました。その結果、フィードバック制御を一切行わない(つまりフリーランニング状態の)二つの超短パルスレーザーを使って、非同期サンプリング法によるテラヘルツ分光が可能であることを実証しました。この成果は、非同期サンプリング法のために必要な装置のコストを大幅に削減し、高分解能テラヘルツ分光の適用範囲を大きく広げる可能性を提示した画期的な成果であると考えられ、高く評価されました。

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(公開日: 2022年12月09日)