Home >  ニュース > 藤本知宏(松永研M2)氏、日本物理学会学生優秀発表賞を受賞

藤本知宏(松永研M2)氏、日本物理学会学生優秀発表賞を受賞

松永研究室M2の藤本知宏氏が、東京工業大学にて行われた日本物理学会2022年秋季大会にて学生優秀発表賞(領域5)を受賞しました。本賞は、将来の領域5(光物性分野)を担う優秀な学生の研究を奨励することを目的に、本大会で発表された29件の中から優秀な発表を行った4名に授与されました。

受賞対象となった発表は「バルクGaAsのスピン選択光励起によるテラヘルツ異常ホール伝導ダイナミクスの観測」です。

円偏光の光を物質に当てると、人為的に時間反転対称性を破ることによって物質中の電子が持つ自由度を操作することができるため、興味深い研究が盛んに行われています。その中でも、代表的な半導体である砒化ガリウム(GaAs)に円偏光を当てると、スピン偏極したキャリアが生成されるため、スピン流から電流への変換を実現する逆スピンホール効果が初めて実証された舞台としても知られています。しかしその逆スピンホール効果が高速の電場に対してどのように応答するのかはあまり調べられていませんでした。

そこで藤本氏は、GaAsに円偏光を当てた時に生じる伝導度の変化を、テラヘルツパルス電場の偏光回転によって調べる実験を行いました。バンドギャップを超える光パルスを照射することで誘起されるテラヘルツパルスの偏光回転、つまり異常ホール効果を観測することに成功し、さらに2次元的に時間遅延を制御して詳細に調べることで、2つの全く異なる起源によって異常ホール効果が出現することを明らかにしました。そのうち一つが光励起されたスピン偏極電子による逆スピンホール効果、もう一つはプローブ電場による反転対称性の破れによって生じた電場誘起円偏光ガルバノ効果によって説明することに成功しました。

本研究は、半導体におけるスピンホール効果の周波数特性や高速ダイナミクス、非線形電流の発生メカニズムを明らかにする重要な結果であると考えられます。

関連ページ

(公開日: 2022年11月02日)