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高精度磁歪測定でUTe2のメタ磁性転移の正体に迫る

東京大学物性研究所の三宅厚志助教と徳永将史准教授の研究グループは東京大学新領域、電気通信大学、大阪大学、東北大学、九州大学、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)との共同で、スピン三重項超伝導として注目されているUTe2のメタ磁性転移について高精度な磁歪測定を行い、その起源に迫る重要な結果を見出しました。

図1  UTe2のb軸に磁場(H)を印加したときの磁場発生時温度1.4 Kでの(a)磁化と(a)各結晶軸方向の線磁歪と体積磁歪

UTe2は磁場困難軸に磁場を印加すると、超伝導相が安定になる特徴的な振る舞いが観測されています。さらに磁場をかけると35 T付近で磁化の非線形な増大を示すメタ磁性転移が起き、超伝導は突然消失します。驚くべきことに、磁場の方向を変えるとメタ磁性転移と同時に超伝導が出現するという興味深い現象が報告されました。このようにメタ磁性転移が磁場方向によって、超伝導相を抑制、または誘起することから、その起源、超伝導転移への関連性に興味がもたれてきました。

本研究では、60 Tまでのパルス磁場下において、物性研の池田暁彦助教(現:電通大 助教)らによって開発された手法を用いて高精度な磁歪測定を行いました。その結果、定量的な磁歪の結果を得ることに成功し、異方的な格子歪みを示すことを発見しました。さらに、他のメタ磁性体、重い電子系との比較の結果、ウランの局在・遍歴二重性モデルに基づき、UTe2のメタ磁性転移はウランの価数転移を伴っている可能性を指摘しました。ウラン化合物で価数転移が観測されている例はほとんどなく、磁場に堅牢な新しい超伝導発現機構として実験的、理論的研究の発展を促す重要な結果です。

本研究は,Journal of the Physical Society of Japanオンライン版(2022年5月17日)に掲載され,JPSJ編集者注目論文に選出されました。

発表論文

  • 雑誌名:Journal of the Physical Society of Japan
  • 論文タイトル:Magnetovolume Effect on the First-Order Metamagnetic Transition in UTe2
  • 著者: Atsushi Miyake, Masaki Gen, Akihiko Ikeda, Kazumasa Miyake, Yusei Shimizu, Yoshiki J. Sato, Dexin Li, Ai Nakamura, Yoshiya Homma, Fuminori Honda, Jacques Flouquet, Masashi Tokunaga, and Dai Aoki:
  • DOI:https://doi.org/10.7566/JPSJ.91.063703

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(公開日: 2022年06月07日)