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清水貴勢(勝本研D3)氏、日本物理学会学生優秀発表賞を受賞

勝本研究室D3の清水貴勢氏が、第76回年次大会(2021年)日本物理学会学生優秀発表賞(領域4)を受賞しました。この賞は物理学の発展に貢献する優秀な発表(口頭講演)を行った学生に対して授与されるものです。

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受賞対象となった発表は「スピン軌道相互作用を用いた並走エッジチャネル間のビームスプリッター」です。

近年、半導体に作製した電子の干渉計を用いて電子の位置と位相の情報を飛行量子ビットとして操作する研究が盛んに行われており、特に量子ホール効果によって二次元電子系の端に生じるエッジチャネルはカイラリティにより電子が高いコヒーレンスを有するため干渉計の光路として注目されています。しかし、ビームスプリッターとして量子ポイントコンタクトを用いる従来の手法では飛行量子ビットの基本演算素子である2経路干渉計の直列接続がトポロジーの制約上禁止されるため、量子情報処理に必要な複数の演算ができないという問題が生じます。

そこで清水氏らは、逆向きにスピン偏極した2本の並走エッジチャネル間に意図的な遷移を導入できる新たなビームスプリッターを考案・実証することで、直列接続可能な2経路干渉計の実現を目指しました。エッジチャネルを空間的に屈曲させると、電子の運動量変化に伴いスピン軌道相互作用によるスピン反転が生じてチャネル間遷移が起こることは以前から知られていました。清水らはこれまでに屈曲部の曲率が大きいほど遷移確率が大きくなることを発見し、ゲート電極を用いた曲率操作により遷移確率の操作が可能であることを実証していましたが[1]、操作可能な遷移確率の上限値は2%と小さかったため新たなゲート形状を考案し屈曲部を鋭角にすることで遷移確率の向上を試みました。その結果、2経路干渉計の作製に必要な50%の遷移確率を得ることに成功し、並走エッジチャネル間のハーフミラーを初めて実現しました。さらに、このビームスプリッターを用いて実際に2経路干渉計を作製し、約60%という高い干渉可視度を得ることに成功しました[2]。これはエッジチャネルを用いない先行研究に比べて4倍程度大きな値であり、2経路干渉計を用いた量子演算の忠実度が飛躍的に向上したことを意味します。本手法を用いることで半導体飛行量子ビットを用いた量子情報処理の研究が大きく加速すると期待されます。

関連論文

  • [1] Takase Shimizu, Taketomo Nakamura, Yoshiaki Hashimoto, Akira Endo, and Shingo Katsumoto, Gate-controlled unitary operation on flying spin qubits in quantum Hall edge states, Phys. Rev. B 102, 235302 (2020). Editor’s Suggestion.
  • [2] Takase Shimizu, Taketomo Nakamura, Yoshiaki Hashimoto, Akira Endo, and Shingo Katsumoto, in preparation.

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(公開日: 2021年05月19日)