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萬年健太郎(井上研M2)氏、日本生体エネルギー研究会の学生ポスター発表優秀賞を受賞

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井上研の萬年健太郎氏が日本生体エネルギー研究会 第46回討論会の学生ポスター発表賞を受賞しました。この賞は、生体エネルギー研究において優秀なポスター発表を行った学生に授与されるものです。12月9日〜11日に開催された討論会にて、発表された学生ポスターの中から最も優秀な1件として選ばれました。

受賞対象となった発表タイトルは「TATロドプシンのpKaと多量体形成の制御における保存されたグルタミン酸の役割」です。
海や淡水、土壌などに住む多くの微生物に見られる光受容タンパク質・微生物ロドプシンは、多様な性質や機能を持ち、微生物が光をエネルギーや情報として利用することで様々な環境に適応するのを支えています。近年、遺伝子解析技術の発展によって膨大な数の新しい微生物ロドプシンが報告され、新しい性質や機能を持つロドプシンが発見されてきています。本研究の研究対象としたTATロドプシンもその一つで、通常の微生物ロドプシンが可視光を吸収するのに対して、TATロドプシンは生理学的な条件で可視光と紫外光の両方を同時に吸収するというユニークな性質を示すことが知られていました。今回、萬年氏らはこれまで1種類しか見つかっていなかったTATロドプシンを、海洋の微生物ゲノムデータベースから新たに8種類発見しました。そしてそのうちの2種類についてタンパク質の性質を詳細に調べ、可視光と紫外光の両方を同時に吸収する性質が、TATロドプシンファミリーで広く共通するものであることが示されました。さらにアミノ酸配列の比較により、TATロドプシン全体で高度に保存された残基(Glu54)を見つけ出し、このGlu54を変異させたタンパク質を作製することで、TATロドプシンの特徴的な光吸収がGlu54によってもたらされていることを明らかにした。また、TATロドプシンが微生物ロドプシンではまだ報告されていなかった4量体を形成すること、この多量体形成のメカニズムにもGlu54が関わっていることを見出しました。本研究では、TATロドプシンが多量体形成においてもユニークな性質を示すこと、TATロドプシンに特徴的な分光学的・構造学的性質にGlu54という一つのアミノ酸残基が共通して関わっていること、といった新しい発見があり、微生物ロドプシンの多様性について新たな知見がもたらされ、これらの点が評価され受賞に至りました。

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(公開日: 2021年01月18日)