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Seminar
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松田(康)研の野村和哉氏、金道研の佐藤和樹氏、強磁場研究会ポスター賞を受賞

11月29、30日に行われた強磁場研究会にて、松田(康)研究室D2の野村和哉氏と金道研D1の佐藤和樹氏(大阪大学大学院理学研究科萩原研究室所属、物性研に共同利用留学中)がポスター賞を受賞しました。この研究会は、強磁場計測を使った最新の物質・材料研究について発表討論と、未踏計測領域への挑戦に必要な新たな計測手法、今後の先端強磁場計測の展望について議論するものです。今回は「強磁場コラボラトリーが拓く未踏計測領域への挑戦と物質・材料科学の最先端」と題して開催され、約50件のポスター発表があり、その中から優秀なものに対してポスター賞が授与されました。

左から:松田研D2野村和哉氏、金道研D1佐藤和樹氏(阪大理)
左から:松田研D2野村和哉氏、金道研D1佐藤和樹氏(阪大理)
図1 スピンラダー系 電子スピン(矢印)がはしごのように並んでいる
図1 スピンラダー系
電子スピン(矢印)がはしごのように並んでいる

図2  一巻きコイル法による磁場発生の瞬間 図2 一巻きコイル法による磁場発生の瞬間

野村氏の受賞対象となった発表は「有機スピンラダー物質の超強磁場磁化過程」です。電子スピンが1次元や2次元の低次元に規則的に並んだ系は、低次元スピン系といわれ量子力学の効果が顕著に現れ多くの研究が行われている分野の一つです。低次元スピン系物質に磁場を印加し、物質の持つ磁石の強さを測定する”磁化測定”を行うことにより、量子力学的な性質を明らかにすることができます。

今回、電子スピン鎖が2本並んだスピンラダー系(図1)であるBIP-TENOの100テスラまでの磁化測定を一巻きコイル法という手法を用いて行いました。100テスラという磁場は非常に強く爆発を伴う手法でしか発生させることができません(図2)。一巻きコイル法の磁場発生は、10マイクロ秒という非常に短い時間で行われますが、測定の結果から、一巻きコイル法のような非常に速い磁場掃引でしか現れないスピンの状態(量子状態)が実現している可能性のある結果が得られました。

このように”速い”磁場掃引が量子状態をつくりだすという報告はこれまでになく、このようなことが起こる機構解明に取り組んでいます。

佐藤氏の受賞対象となった発表は「三角格子反強磁性体 NiGa2S4のパルス強磁場下熱測定」です。幾何学的フラストレート磁性体とは、反強磁性体において格子がもつ幾何学的条件によって基底状態の磁気秩序が一意的に決まらない磁性体のことを指し、温度や磁場を変えることで様々な磁気構造を取り得る特徴を持ちます。NiGa2S4は、磁性を担うNi2+(S=1)が三角格子状に配列した幾何学的にフラストレートしている反強磁性体で、45テスラ以上の強磁場下ではスカーミオン格子形成の可能性が理論的に示唆されています。

これはカイラル磁性体で考えられているジャロシンスキー・守谷相互作用により誘起されるスカーミオン格子ではなく、フラストレーションによって誘起されるスカーミオン格子であり、そのような物質は今までに報告例がありませんでした。

そこで本研究では、物性研のパルス磁石を用いて最大磁場60テスラまでの強磁場を印加し、磁気熱量効果を測定する事で物質内の磁気エントロピー変化から新規相への相転移を調べました。その結果60テスラ近傍でエントロピーが下がって行く振る舞いが見え、更なる高磁場下では新規相への相転移を示唆する結果が得られました。


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(公開日: 2017年12月06日)