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榊原研の中村翔太氏、Actinides2017にてStudent poster awardを受賞

榊原研究室の中村翔太氏が、2017年7月9日~14日に東北大学百周年記念会館川内萩ホールにて開催された、国際会議Actinides2017で、学生による優れたポスター発表に贈られる「Student poster award」を受賞しました。

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受賞した発表タイトルは “Magnetization Study on the Ising Ferromagnet URhGe with High-Precision Angle-Resolved Magnetic Field near the Hard Axis”です。

研究対象のウラン化合物URhGeは、強磁性と超伝導の二つの状態が一つの物質内で発現する物質です。この物質に特定の方向(磁化困難軸方向(b軸)方向)から5度以内の狭い角度に磁場をかけると、超伝導が一度壊れてしまいますが、さらに強い磁場かけると再び出現するという、磁場による特異な超伝導増強現象(リエントラント超伝導)が見つかっています。一方、同様の狭い磁場角度範囲で、磁気スピンの一次相転移が起こることが予言されており、この相転移の起点である三重臨界点の揺らぎがこの現象のカギを握っていると言われていました。これまで盛んに三重臨界点の研究が試みられてきましたが、磁場角度を高精度(0.1度)に調整しなければ正確に観測できないため、測定は困難でした。そこで、中村氏らは極低温・高磁場下で試料の角度を0.01度の精度で制御できる2軸回転機構を備えた磁化測定装置を開発し、磁化からURhGeの三重臨界点を捉え、三次元相図の作成に成功しました(下図)。この相図から三重臨界点はこれまで予想されたよりも超伝導状態から離れた高温にあり、三重臨界点の揺らぎは超伝導に直接影響しない可能性を示しました。

URhGeの三次元相図オレンジ色の面上で磁気スピンの一次相転移が起こる。三重臨界点はその一次相転移が起こる面の起点となっており、4K以上の高温にあるのに対して、特異な超伝導(リエントラント超伝導)は高磁場(〜12 T)下かつ0.5 K以下の低温で起こる。
図 URhGeの三次元相図
オレンジ色の面上で磁気スピンの一次相転移が起こる。三重臨界点はその一次相転移が起こる面の起点となっており、4 K以上の高温にあるのに対して、特異な超伝導(リエントラント超伝導)は高磁場(〜12 T)下かつ0.5 K以下の低温で起こる。

磁化は強磁性量子相転移の理論に結び付けられる熱力学量であり、磁化から三次元相図の作成に成功した今回の結果は、磁場と超伝導増強の関係を明らかにするための重要な成果と言えます。また、本研究で開発した装置によって強い異方性のある系の研究の更なる進展が期待されます。


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(公開日: 2017年08月17日)