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近藤猛准教授がサー・マーティン・ウッド賞を受賞

優れた研究を行っている若手研究者に贈られる第22回サー・マーティン・ウッド賞を近藤猛准教授が受賞しました。この賞は、英国の科学機器メーカーであるオックスフォード・インストゥルメンツ社より寄せられた寄附金を基に、凝縮系科学分野の研究者の交流の場を設けること、研究奨励、日英の科学技術交流の場を増やすことを目的として創設され、凝縮系科学(固体物理学、無機・有機固体化学、材料科学、表面物理など)において日本で優れた業績を挙げた45歳以下の若手研究者に贈られます。11月13日に駐日英国大使館で行われた 第22回ミレニアム・サイエンス・フォーラムにて授与されました。

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駐日英国大使館にてポール・マデン大使よりサー・マーティン・ウッド賞を授与された近藤 猛 准教授(画像提供:ミレニアム・サイエンス・フォーラム事務局)

受賞対象となった研究題目は「先端的角度分解光電子分光による銅酸化物高温超伝導体の電子状態の解明」です。

モット絶縁体である反強磁性銅酸化物に伝導性キャリア(ホールまたは電子)を注入した際に発現する高温超伝導は、20世紀後半の物理学の最も重要な発見の一つです。銅酸化物高温超伝導体の発見直後から注目を集めたものが、超伝導転移温度TC以上において様々な物性に観測された異常な振る舞いです。それを象徴する電子状態が、フェルミ準位近傍の状態密度にTC以上の高温から開き始める擬ギャップです。これは、「大きなフェルミ面」とも「小さなフェルミポケット」とも言えないアーク状のフェルミ面を生じ、極めて奇妙な電子状態だと言えます。この擬ギャップ状態が、超伝導の現れる前駆現象として発生するのか、あるいは超伝導とは無関係でむしろ競合するのか、解釈が分かれていました。これに対し近藤氏は、物性研で開発されたレーザーを光源する超高分解能角度分解光電子分光を用いて、バンド構造の詳細観察を行いました。そして、バンドに開くエネルギーギャップの大きさに加えて、スペクトル量に着目することで、擬ギャップ状態が超伝導と競合する振る舞いを明確にしました。さらに、TC以上で開くギャップは単一ではなく、擬ギャップ温度よりも比較的低温かつTcよりも十分高温から、電子対の形成に起因する電子対ギャップが、擬ギャップ状態と競合しつつ発達することを見出しました。さらに、ごく最近の研究によって、モット絶縁相近傍での「小さなフェルミポケット」の観測に初めて成功しました。超不足ドープ領域での現象は、長年の理論的難問であるモット転移の解明にもつながるものですが、同時に現実の物質においてはキャリアドープに伴うランダムな元素置換が電子状態の大きな不均一性をもたらし、現象の本質的理解を困難にしていました。近藤氏が着目した多層型物質は、電荷供給層に直接接することのない内側に守られた「綺麗な」CuO2を有することが、「小さなフェルミポケット」を初観察する上での鍵となりました。

関連論文

  • [1]”Observation of small Fermi pockets protected by clean CuO2 sheets of a high-Tc superconductor″, Science 369, 833 (2020).
  • [2]”Point nodes persisting far beyond Tc in Bi2212″ Nature Communications 6, 7699 (2015).
  • [3]”Anomalous Doping Variation of the Nodal Low-Energy Feature of Superconducting (Bi, Pb)2(Sr, La)2CuO6+δ Crystals Revealed by Laser-Based Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy” Physical Review Letters 110, 217006 (2013).
  • [4]”Disentangling Cooper-pair formation above the transition temperature from the pseudogap state in the cuprates.” Nature Physics 7, 21 (2011).
  • [5]”Competition between the pseudogap and superconductivity in the high-Tc copper oxides” Nature 457, 296 (2009).
  • [6]”Evidence for two energy scales in the superconducting state of optimally doped (Bi,Pb)2(Sr,La)2CuO6+δPhysical Review Letters 98, 267004 (2007).

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(公開日: 2020年11月24日)