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可積分なスピン系における無数の保存量の構造を解明

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程2年の野澤優治大学院生と修士課程2年の深井康平大学院生は、XYZ模型(図1)と呼ばれる無数の保存量が存在するスピン系を解析し、それらの保存量の具体的な構造を明らかにしました。

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図1 本研究の対象であるXYZ模型の模式図
直線上に等間隔に矢印(スピン)が並んでおり、隣り合ったスピンが相互作用しながら時間発展していく理論モデル。本研究で扱ったスピンの大きさは電子のスピンと等しい1/2である。相互作用の強さはxyzの各軸方向で、それぞれJX、JY、JZ によって与えられる。先行研究において既に保存量の具体的な構造が明らかになっていたのは、スピンにとって特別な方向がないJX = JY = JZ が成り立つ場合のみであった。一方、本研究で得られた具体的な構造は、全てのJX、JY、JZ の値において適用できる。

XYZ模型の単純な場合である、スピンにとって特別な方向がない(等方的な)場合に関しては、保存量の構造が先行研究によって明らかにされていましたが、異方性が存在するより一般的な場合に関しては、構造の複雑さのために等方的な場合における解決から25年以上の間未解決の問題として残されていました。

研究グループは、異方性が存在する場合を含めた一般的な場合において、保存量の構成要素の比率(線形結合の係数)に規則性が存在することを発見しました。さらにその規則性を用い、無数の保存量を具体的に構成できることを証明しました。

本研究は広い範囲の可積分なスピン系において、新たな視点によって無数の保存量の構造を解明したものであり、保存量の数理的構造のさらなる理解や、量子多体系の非平衡現象の数値シミュレーションへの応用が期待される結果であると考えています。

本研究成果は、米国物理学会が発行する学術誌「Physical Review Letters」の2020年8月26日付けオンライン版で公開される予定です。

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発表雑誌:

  • 雑誌名:Physical Review Letters(8月26日オンライン版掲載予定)
  • 論文タイトル:Explicit Construction of Local Conserved Quantities in the XYZ Spin-1/2 Chain
  • 著者:Yuji Nozawa* and Kouhei Fukai
(公開日: 2020年08月24日)