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光励起した超伝導体La1.85Sr0.15Cu2O4における非平衡ジョセフソンプラズマ共鳴

日程 : 2017年10月16日(月) 10:00 am 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第一会議室 (A636) 講師 : 松永隆佑 所属 : 東京大学物性研究所

パルスレーザーを用いて物質を超高速に光操作する研究が盛んに行われている中で、近年特に大きなインパクトをもたらした研究の一つがYBa2Cu3O6+δで報告された「光誘起室温超伝導」である。他にもいくつかの銅酸化物で類似の現象が観測され[1]、その解釈について盛んに議論が行われている。この一連の実験が光誘起超伝導と解釈されたのは、ジョセフソンプラズマ共鳴(JPR)と呼ばれる光学応答が、光励起後の過渡反射スペクトルに現れたことに起因する。銅酸化物超伝導体は一般に、伝導性の高いCuO2面が絶縁層を挟んでc軸方向に連なった積層構造を持ち、転移温度以下ではCuO2面内の2次元超伝導が天然のジョセフソン接合によってc軸方向に繋がることでバルク全体として超伝導を示す。このc軸方向の伝導によるプラズマ端がJPRとしてテラヘルツ帯反射率に現れるため、テラヘルツパルスをプローブとした時間分解測定が非平衡超伝導研究において重要な役割を果たしている。

これまでの実験は、擬ギャップの現れるアンダードープ領域や、超伝導とストライプ秩序が拮抗する物質など、基底状態の詳細が未だ明らかにされていない系を非平衡にして現れるJPRを議論しているため、解釈が極めて難しい。このような複雑な系について議論する前に、まず典型的なJPRを示す銅酸化物超伝導体を光励起した時にJPRがどう変化するかを明らかにすることが必要である。我々は最適ドープLa1.85Sr0.15Cu2O4に光励起を行い、平衡下とは異なるJPRが現れる特異な準安定相が出現することを発見した[2]。銅酸化物超伝導の非平衡下の振る舞いに新たな解釈を与えるこの実験結果について議論したい。

[1] For a review, see e.g., D. Nicoletti and A. Cavalleri, Adv. Opt. Photon. 8, 401 (2016).

[2] K. Tomari, R. Matsunaga, R. Shimano et al., in preparation.


(公開日: 2017年10月05日)