Home >  研究会等 > 超強磁場下における強相関半導体の半導体-金属転移

超強磁場下における強相関半導体の半導体-金属転移

日程 : 2021年12月16日(木) 10:00 - 11:00 場所 : オンライン(Zoom) 講師 : 中村 大輔 所属 : 理化学研究所 創発物性科学研究センター 世話人 : 松田 康弘
e-mail: ymatsuda@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

 東京大学物性研究所付属国際超強磁場科学研究施設では、一巻きコイル法および電磁濃縮法を用いた100テスラを超える超強磁場の発生および超強磁場下での物性計測という特色ある研究を行なっている。特に電磁濃縮法に関しては、発生できる磁場強度に関してここ10年の間に飛躍的な進歩があり、現在では1200テスラまでの磁場発生が可能となっている[1]。また、より簡便に実験を行うために電磁濃縮装置を2台に増設し、1台は400テスラ程度までの最大磁場強度に抑えた設計とすることで、装置のメンテナンスが少なくユーザーが繰り返し実験をしやすいような磁場環境を整えている。今回のセミナーでは、測定温度を変えた繰り返し実験によって超強磁場領域における温度-磁場相図を決定した研究の例として、強相関半導体の磁気抵抗測定に関する結果を紹介する。
 強相関半導体FeSiおよびSmB6では、電子相関効果によって低温で数十meVのエネルギーギャップが開き、半導体的な輸送特性を示す。特にSmB6では、トポロジカル表面状態の存在が近年提唱されており、興味が持たれている[2]。超強磁場下では、ゼーマン効果によるエネルギーバンドのシフト量が半導体のエネルギーギャップに匹敵するため、磁場誘起の半導体-金属(S-M)転移が生じる。さらに、インギャップ状態の電子構造を反映した磁気抵抗の変化を観測することが可能である。しかし、超強磁場領域では電磁ノイズとの干渉が生じやすい電気抵抗測定はあまり行われてこなかった。そこで、ノイズ除去に最も効果的なのは高周波のプローブ信号を用いてノイズ成分をフィルタリングすることであることを考慮し、500MHz-1GHz領域の非接触電気伝導度計測手法を開発することによって高精度かつ信頼性の高い磁気抵抗測定を可能にした[3]。その結果、FeSiでは270テスラにおいてS-M転移が生じることが明らかになった[4]。また、SmB6では、190テスラでS-M転移を示すとともに、トポロジカル表面状態とは異なる特徴的な低温相が存在することが初めて明らかになり、特徴的な準粒子励起が生じていることが示唆される結果が得られた[5]。
 講演では、強磁場ヘビーユーザーが自分の研究室で使用できる省コスト・省スペースの強磁場発生装置の例として、現在理化学研究所において製作中である、ミニパルスマグネットを用いた30テスラ級強磁場発生装置に関する話題も提供したい。

[1] D. Nakamura et al., Rev. Sci. Instrum. vol.89, p.095106 (2018).
[2] D. J. Kim et al., Sci. Rep. vol.3, 3150 (2013).
[3] D. Nakamura et al., Meas. Sci. Technol. vol.29, p.035901 (2018).
[4] D. Nakamura et al., Phys. Rev. Lett., vol.127, p.156601 (2021).
[5] D. Nakamura et al., submitted.

聴講希望の方は以下からご登録ください。
https://forms.gle/Lko9xbnS58N9eqHB8


(公開日: 2021年12月01日)