2次元ナノ材料上の自己組織化ペプチドによるバイオ・ナノ界面
タンパク質などの生体分子は、その特異な分子構造や電子構造から生体内でさまざまな機能を発現する。また、往々にしてその分子構造がダイナミックに変化し、それに伴い電子構造も変化する。我々は、この生体分子のダイナミックな特性と、これまで発展してきたエレクトロニクスを組み合わせた新たなエレクトロニクスの創生を目指して研究を行っている。グラフェンや2次元遷移金属カルコゲナイドに代表される2次元ナノ材料は、その物性の理解が進み、広い分野での応用が期待される。中でも、バイオセンサなどへのバイオ応用に向けた期待は高く、生体分子と2次元ナノ材料の界面に関する理解はその重要性を増している。近年我々は、グラファイトに特異的に吸着し、単分子厚の自己組織化膜を形成するペプチド[1]の開発に成功した。グラフェン電界効果型トランジスタの表面に吸着させたペプチドによってグラフェンの電子特性がどのように変化するかを定量的に調査した結果、ペプチドを用いたバイオセンサの開発にも成功している[2,3]。また、近年では、二硫化モリブデンなどの2次元金属カルコゲナイド物質を基板に使用することにより、半金属特性を有するグラフェンと比して、半導体特性を有するナノシート上でのペプチドの振る舞いやその影響によるナノシートの電気・光特性の変化について、詳しく調査してきた[4,5]。特に、乾燥した雰囲気ではなく固液界面におけるペプチドの振る舞いについて注力して研究を行い、ペプチドのダイナミックな物性が明らかになってきている。中でも、水溶液のpHや電解質の濃度や種類によってペプチドの自己集合に変化が出ることや、また、二硫化モリブデンの発光特性に大きな影響が出ることが解った。これらの結果は、電気化学的な観点からも現象を理解することの重要性を示唆している。
【参考】
- C. R. So, Y. Hayamizu, H. Yazici, C. Gresswell, D. Khatayevich, C. Tamerler, and M. Sarikaya, “Controlling Self Assembly of Engineered Peptides on Graphite by Rational Mutation,” ACS Nano, 6 (2) 1648-1656 (2012)
- T. R. Page, Y. Hayamizu, C. R. So, and M. Sarikaya, “Electrical Detection of Biomolecular Adsorption on Sprayed Graphene Sheets”, Biosens. Bioelectron., 33 (1) 304-308 (2012)
- D. Khatayevich, T. Page, C. Gresswell, Y. Hayamizu, W. Grady, and M. Sarikaya, “Selective detection of target proteins by peptide-enabled graphene biosensor” Small 10 (8), 1505-1513 (2014)
- Hayamizu, Yuhei, et al. “Bioelectronic interfaces by spontaneously organized peptides on 2D atomic single layer materials.” Scientific Reports 6 (2016).
- 早水裕平 「自己組織化ペプチドによるバイオ・ナノ界面の研究」応用物理 第85巻 第12号 p.1010 (2016).