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光物性に現れる非相反

日程 : 2020年12月4日(金) 13:00 - 14:00 場所 : ライブ配信(ZOOM) 講師 : 小川 直毅 所属 : 理化学研究所、東大院工、さきがけ 世話人 : 近藤 猛 (04-7136-3370)
e-mail: kondo1215@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

 固体中の電子、光子、マグノン、フォノンの運動に非相反性が現れる例が知られている。特に、相関電子系や量子物質においては、ベリー位相やトロイダルモーメント、モノポールなど、物性物理で近年話題となっているキーワードがその非相反物性に強く関連している[1]。本講演では、上記各量子の非相反伝搬に対する分光研究、具体的には、シフト電流、非相反SHG、マグノンとフォノンの磁気カイラル効果の検証について紹介したい。
 空間反転対称性の破れた結晶中の自発光電流は、長らく「異常光起電力効果」と呼ばれてきた。その異常性は、光起電力が物質のバンドギャップを大きく上回ること、また光の波長や偏光に依存して、光電流の符号が反転する点などに代表され、単純な分極電流としては理解できない。近年、その起因が電子バンドのトポロジーにあることが明らかとなり、シフト電流と呼ばれるようになった[2]。我々は、光励起時の電荷運動が放射するTHz電磁波を分光することにより、シフト電流の高速ダイナミクスの観測を行った[3,4]。
 磁気秩序と電子分極が相関したマルチフェロイクス物質中では、これまでに「一方向透過窓」「一方向発光」など様々な光子の操作が実証されてきた[5]。我々は、マルチフェロイクスにおける第二高調波発生が、より容易に大きな非相反性を生み出すことを見出した。試料結晶の片側から入射した1ω光に対しては2ω光が発生するが、反対側から入射した場合にはこの第二高調波発生がほぼ完全に抑制され、その効果は10 mT程度の外部磁場によって反転することができる。
 カイラル磁性体中の強磁性的マグノンやフォノンは非相反伝搬を示すことが知られている[6,7]。これは、DM相互作用により分散曲線が波数空間で対称点からずれること、またマグノンとフォノンの磁気弾性結合によって説明される。我々は、ブリルアン光散乱分光により、カイラル磁性体中のヘリマグノンも非相反性を示すこと、またフォノンイメージング分光により、高周波の弾道フォノンが比較的大きな磁気カイラル非相反を示すことを見出した。

[1] Y. Tokura & N. Nagaosa, Nature Commun. 9, 3740 (2018).
[2] T. Morimoto & N. Nagaosa, Sci. Adv. 2, e1501524 (2016).
[3] M. Sotome et al., PNAS 116, 1929 (2019), Appl. Phys. Lett. 114, 151101 (2019).
[4] 小川 他、日本物理学会誌 Vol. 75, No. 3, 2020.
[5] S. Toyoda et al., Phys. Rev. Lett. 115, 267207 (2015), Phys. Rev. B 93, 201109 (2016).
[6] S. Seki et al., Phys. Rev. B 92, 184419 (2015).
[7] T. Nomura et al., Phys. Rev. Lett. 122, 145901 (2019).


(公開日: 2020年11月06日)