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光電子を通じた電子の軌道混成状態の観測 -物質中の電子の広がりを可視化-

理化学研究所(理研)放射光科学研究センター物理・化学系ビームライン基盤グループ軟X線分光利用システム開発チームの久我健太郎客員研究員(可視化物質科学研究グループ量子状態可視化研究チーム特別研究員(研究当時))、可視化物質科学研究グループ量子状態可視化研究チームの木須孝幸チームリーダー(研究当時)、大阪大学大学院基礎工学研究科の関山明教授、藤原秀紀助教らの共同研究グループは、直線偏光制御した硬X線を用いた内殻光電子分光により、局在性の弱いイッテルビウム(Yb)化合物における4f電の電子軌道波動関数を決定しました。本共同研究グループには、物性研究所の中辻知教授が参画しています。

図 直線偏光制御硬X線光電子分光測定の概略図(左)とβ-YbAl4におけるYbの持つ4f電子の電荷分布(右)
図 直線偏光制御硬X線光電子分光測定の概略図(左)とβ-YbAl4におけるYbの持つ4f電子の電荷分布(右)

本研究成果は、本実験手法が、従来から利用された局在電子モデルが成り立つ希土類化合物だけでなく、原理的には遷移金属を含む局在性の弱い化合物でも適応可能なことを示したことから、機能性材料開発が加速すると期待できます。

今回、共同研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」にて硬X線の電場成分を水平あるいは垂直方向に直線偏光制御し、イッテルビウム化合物β-YbAlB4(Al:アルミニウム、B:ホウ素)に当てた際に放出される電子の放出方向やエネルギーを詳細に調べました。その結果、イッテルビウムが持つ4f電子の波動関数を精密決定することができ、さらにその空間分布が局在電子モデルから予想されるものと大きく異なっていることが分かりました。これは、イッテルビウムが持つ4f電子がホウ素に由来する伝導電子と強く混成した軌道混成状態を形成していることを示しています。

本研究は、米国の科学雑誌『Physical Review Letters』の掲載に先立ち、オンライン版(7月17日付け:日本時間7月18日)に掲載されました。

理研発表プレスリリース

発表雑誌:

  • 雑誌名:「Physical Review Letters」(オンライン版米国時間7月17日掲載)
  • 論文タイトル:Effect of Anisotropic Hybridization in YbAlB4 Probed by Linear Dichroism in Core-Level Hard X-ray Photoemission Spectroscopy
  • 著者:Kentaro Kuga, Yuina Kanai, Hidenori Fujiwara, Kohei Yamagami, Satoru Hamamoto, Yuichi Aoyama, Akira Sekiyama, Atsushi Higashiya, Toshiharu Kadono, Shin Imada, Atsushi Yamasaki, Arata Tanaka, Kenji Tamasaku, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa, Satoru Nakatsuji, and Takayuki Kiss
  • DOI番号:10.1103/PhysRevLett.123.036404
(公開日: 2019年07月29日)