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新物質セミナー:Yb2Ti2O7における量子磁気単極子のコヒーレントな伝導

日程 : 2015年1月21日(水) 13:30 - 15:00 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 常磐欣文氏 所属 : 京都大学低温科学研究センター 世話人 : 榊原俊郎 (63245)講演言語 : 日本語

パイロクロア希土類酸化物、Ho2Ti2O7, Dy2Ti2O7といった物質で実現するスピンアイスという状態では、その第一励起状態は磁気単極子と考えられ、盛んに研究が行われている。これらの2物質のような古典スピンアイスでは、磁気単極子の励起は分散を持たないため、それらの運動は拡散的である。一方、量子スピンアイスと呼ばれる系において、量子揺らぎが磁気単極子にどのような影響を与えるかということは、まだ明らかにされていない。我々は0.2Kで強磁性秩序を起こす、Yb2Ti2O7の熱伝導と熱膨張を測定し、常磁性状態での励起エネルギーの大きさや磁気励起による熱伝導を調べた。この物質が古典スピンアイス状態を取った場合、相互作用のイジング成分の2倍(2J//=4K)が磁気単極子の励起エネルギーに相当する。しかしながら、我々の結果は励起エネルギーがほぼゼロであることを示唆している。これは、量子揺らぎの原因となる非イジング成分により、磁気単極子励起がバンドを形成しているために、ギャップが潰れていることを示している。また、熱伝導の磁場依存性から磁気単極子による伝導の成分を取り出すことが出来た。見積もられた平均自由行程は約1μmと非常に長いものであることが分かった。これは、分散の無い古典磁気単極子とは対照的に、バンドを形成している量子磁気単極子がコヒーレントな伝導をしていることを示している。このような量子単極子は量子スピンアイスの物理的性質に関して重要な役割を担うものである。


(公開日: 2015年01月14日)