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理論セミナー:低密度電子ガス系における新しい不安定性

日程 : 2015年2月13日(金) 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 高田 康民 氏 所属 : 東京大学物性研究所 世話人 : 高田 康民 (63280)
e-mail: takada @ issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

金属中の多電子系を簡単化したものとして電子ガス模型がある。これは金属電子の性質を大まかに捉える際に有益なものであるが、同時に、a0pF≪1(a0:格子定数、pF:フェルミ波数)の極限では、第一原理のハミルトニアンがこの模型のそれに収束するという意味で低密度電子系を記述する普遍的なものである。
さて、rs=(3/4πn)1/3aB-1 (n:電子密度、aB:ボーア半径)で定義される密度径数で完全に規定されるこの模型は厳密には解けないが、rs<5の通常の金属領域ではRPAとはしご近似、及び、交換項を適切に組み合わせて解析すると、ほぼ正確に各物理量が評価され、量子モンテカルロ計算の結果ともよく一致する。
ところで、rs>5.25では誘電異常(電子系の圧縮率、すなわち、静的長波長極限で電子分極関数が負になること)を生み出すほどに交換相関効果が強くなる。そして、それに伴って新しい物理がこれまでいろいろと示唆されてきた。たとえば、我々も5<rs<8の領域にある超臨界状態のアルカリ液体金属でのアルカリ原子間距離の異常現象を議論した[1]。また、その領域での物理量をGWΓスキーム[2]で計算した結果を報告してきた[3]。
今回、rsが10を超える領域での運動量分布関数n(p)の計算結果を主な材料として、ウィグナー格子状態が出現するrs≈100よりはずっと小さいrs≈20近傍で期待される新規な相の出現可能性を議論したい。この相の出現は、負の圧縮率からも予想される励起子不安定性(自己誘起された多励起子状態の可能性)の問題やrsが6以上でGWΓスキームで計算されているフェルミ面近傍での電子の有効質量の特異な振る舞い(すなわち、ランダウパラメータ、F0やF1、のそれ)とも深く関連しているので、それらも併せて解説する。

[1] H. Maebashi and YT, JPSJ 78, 053706 (2009).
[2] YT, PRL 87, 226402 (2001).
[3] H. Maebashi and YT, PRB 84, 245134 (2011).


(公開日: 2015年02月05日)