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理論セミナー:モット転移近傍の電子状態

日程 : 2015年7月17日(金) 16:00 - 17:00 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 河野 昌仙 氏 所属 : 物質・材料研究機構 世話人 : 加藤 岳生 (63255)
e-mail: kato@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

典型的な金属の物性は自由電子の性質として理解することができる。一方、モット絶縁体は、電荷励起に大きなギャップがあり、低エネルギーの性質はスピン自由度だけで説明することができる。モット転移の問題は、自由電子のように振舞っていた電子がモット転移に向けてどのようにスピンと電荷の自由度が分離した状態へと変化するのかという問題である。本講演では、この問題に関して、1次元ハバードモデルの厳密解の解析[1]、2次元ハバードモデル[2]および t-Jモデルの数値計算、無限小ドープ極限の1電子励起状態とモット絶縁体の磁気励起状態との波動関数の重なりや量子数の選択則などの解析を行った結果を示し、モット転移は電子の動きをスピン自由度に保ったまま、電荷自由度が凍結する転移として特徴づけられることを述べる。また、2次元ハバードモデルおよび t-Jモデルの数値計算結果と1次元系からの摂動論によって、高温超伝導体で観測されている様々な異常な振る舞い(ドーピング誘起状態、フェルミアーク、擬ギャップ、平坦バンド、スピノン的モード、ホロン的モード、キンク、ウォーターフォールなど)を2次元系のモット転移近傍の性質として統一的に説明する[2,3]。

[1] M. Kohno, Phys. Rev. Lett. 105, 106402 (2010).
[2] M. Kohno, Phys. Rev. Lett. 108, 076401 (2012).
[3] M. Kohno, Phys. Rev. B 90, 035111 (2014).


(公開日: 2015年07月06日)