Home >  研究会等 > 放射光セミナー「チオール自己組織化単分子膜の高度機能化に向けた基礎研究: 光励起と複官能基化」

放射光セミナー「チオール自己組織化単分子膜の高度機能化に向けた基礎研究: 光励起と複官能基化」

日程 : 2015年9月1日(火) 11:00 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第1会議室(A636) TV会議 SPring-8会議室 講師 : 加藤 浩之 氏 所属 : 大阪大学大学院 理学研究科 世話人 : 松田 巌 (63402)
e-mail: imatsuda@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

発光や受光を担う分子デバイスにおいて、電子/正孔の生成と動的挙動は、光電変換特性を決める重要な要素である。本研究では、まず官能基を付加した自己組織化単分子膜(SAM)を作製し、分子配向や電子準位を明らかにした上で、光励起電子のダイナミクスにおける基板-励起子間の相互作用について研究してきた。
アルカンチオールの末端にクアテルチオフェン(4T)を結合させた分子は、メルカプト基がAu(111)基板とAu-S結合を形成し、アルキル鎖を介して4T部位が層状に配列する吸着様式(4TCnS-SAM)をとる(図1)。よって、アルキル鎖長nを変化させると、4T層と基板の距離が変化することが期待される。実験では、赤外反射吸収分光(IRAS)を用いてSAM内の分子配向を明らかにし、紫外光電子分光(UPS)や2光子光電子(2PPE)分光を用いてHOMO/LUMO由来の準位が4T部位にある事を確認した。くわえて、ポンプ-プローブパルス光間に遅延時間を設けた時間分解2PPE分光によって、4T部位で励起した電子の緩和過程を測定した。その結果、励起電子の減衰速度がアルキル鎖長nに強く依存することを明らかにした(図2)。講演では、緩和過程の定量解析を基に、4T励起状態とAu基板間の相互作用について議論する。また、今後の展開に関連し、SAMの複官能基化に向けた挑戦についても紹介する。


図1.4T終端アルカンチオール自己組織化単分子膜(4TCnS-SAM)の吸着構造と光励起の模式図。


図2.時間分解2PPE分光を用いて測定した4TCnS-SAMにおける励起電子の減衰曲線。減衰速度は、アルキル鎖長nによって著しく変化する。


(公開日: 2015年08月24日)