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ナノスピン変換科学研究で目指すもの

日程 : 2015年12月10日(木) 16:00 - 17:00 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 講師 : 大谷 義近 氏 所属 : 東京大学物性研究所 世話人 : 加藤 岳生 ・ 山下 穣講演言語 : 日本語

ナノスピン変換とは、角運動量保存則に基づく、電気、光、音、振動、熱の相互変換の総称である。これまでに、スピン変換に関わる研究に於いて日本の研究者が多くの成果に関わっており、巨大スピンホール効果[1]、巨大スピン蓄積・純スピン流誘起磁化反転[2]、スピントルクダイオード効果[3]、スピンゼーベック効果[4]、絶縁体へのスピン注入[5]、スピン起電力[6]、強磁性超薄膜の磁気異方性電圧制御[7]など新しいスピン変換に関わる様々な物性研究の成果が報告されている。このように、スピン変換科学は物質科学に実験と理論の両面から多くの知見を得て、活発かつ魅力的な研究分野として成長し、基礎研究としてだけではなく、実際に役に立つスピン変換応用を見据えたエレクトロニクス産業の関心を勝ちとるに至っている。
昨年度から発足した新学術領域研究「ナノスピン変換科学」では、これらの変換現象を伝導電子スピン、マグノン、フォノン、フォトン等の準粒子間の変換現象として捉え、スピン変換現象を実験と理論の両面から統一的に理解し、最終的には包括的に説明するスピン変換科学の学理を構築することを目的としている。
本講演では、最近得られた成果である、超伝導体中の準粒子を媒介して生じる非線形な逆スピンホール効果[7]や酸化物金属界面で生じるラシュバエデルシュタイン効果[8]や、トポロジカル絶縁体表面で生じるスピン運動量ロッキング現象[10]も紹介しながら、本研究領域の現状と将来展望について述べる。

[1] T Seki et al: Nature Mater. 7, 125 (2008); Y. Niimi et al: Phys. Rev. Lett. 109, 156602 (2012).
[2] T. Yang et al: Nature Phys. 4, 851 (2008).
[3] A. A. Tulapurkar et al: Nature 438, 339 (2005).
[4] K. Uchida et al: Nature 455, 778 (2008).
[5] Y. Kajiwara et al: Nature 464, 262 (2010).
[6] P. N. Hai et al: Nature 458, 489 (2009).
[7] T. Maruyama et al: Nature Nanotech. 4, 158 (2009).
[8] T. Wakamura et al: Nature Mater. 14, 675 (2015)
[9] S. Karube et al: Appl. Phys. Lett. 107, 122406 (2015)
[10] K. Kondou et al: arXiv:1510.03572.

【講師紹介】
大谷先生は長年スピントロニクスの分野を牽引しておられます。特に、今年度より新学術領域「ナノスピン変換科学」の領域代表を務めており、スピントロニクス分野の動向を熟知しています。この機会に、スピントロニクスの最新の研究成果についてご講演いただきます。


(公開日: 2015年11月27日)