第一原理電子状態計算による磁性材料のデータ駆動型探索
e-mail: fuku@issp.u-tokyo.ac.jp講演言語 : 日本語
要旨
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近年の機械学習手法の発展を背景に、データ駆動型の材料探索手法が注目されている。我々は第一原理電子状態計算によるデータ創出を基軸として新規磁性材料の手法開発に取り組んできたが、このような探索に可用なデータが十分に集積されているとはいえないのが現状である。そこでデータの蓄積を進めていきながら、データが少ない場合にも有効な手法から開発していくことが必要だと考えている。
第一原理計算の手法開発はデータの可用性を高める点においても重要である。我々はKorringa-Kohn-Rostoker (KKR) グリーン関数法とCoherent potential approximation (CPA) を組み合わせた手法を用い、ドープ系などの非化学量論的な系をとりあつかう手法を発展させてきた。とくに磁性材料の開発で重要となる原子サイト間の磁気結合の強さを見積もる手法としてLiechtenstein法に着目し、ドープ系でのキュリー温度の見積もりや、これまでは不可能であった規模の系のスピン波分散の計算手法を開発へと展開してきた。たとえばネオジム磁石の典型的な主相化合物でありユニットセルに68個の原子を含むNd2Fe14Bの理論的なスピン波分散を計算し中性子散乱等の実験との比較も可能となった。
またマテリアルズ・インフォマティクス的な取り組みとして、初期データがすくない状況でも有効な機械学習の手法であるベイズ最適化に注目した材料探索手法の開発を行っている。また提案材料の実現性に結びつく生成エネルギーの予測手法が重要と考え、多元系において機能性の期待される準安定状態が最安定相と比べてどれだけエネルギー的に乖離しているかを調べる手法の開発を行ってきた。この手法では複数の競合相を同時に考慮することが可能であり、CPAを用いて計算した非化学量論的な系もデータとして用いることができる。これらを実際に磁石化合物系の第一原理計算のデータに適用することで、元素添加が磁石化合物の熱的安定性に与える影響を解析し、未発見の準安定相が存在する可能性について理論的に提案を行った。
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