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光電子ホログラフィーによるドーパントの原子配列の観測

日程 : 2022年3月29日(火) 1:30 pm 〜 場所 : Zoom 開催 講師 : 松下 智裕 氏 所属 : 奈良先端科学技術大学院大学 世話人 : 近藤 猛 (ex.63370)
e-mail: kondo1215@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

角度分解光電子分光は価電子帯のバンド構造の測定に主に利用されている。価電子帯の光電子放出角度分布にはバンド構造が直接反映されるためである。一方で内殻電子からの光電子角度放出分布を測定すると、光電子ホログラムが得られる。これにより光電子を放出した原子の周辺の立体原子配列が得られる。近年は周期境界条件を持たない結晶中のドーパントなどの原子配列測定に応用して、ドーパントが作る独特な原子配列を垣間見ることができるようになった。
例えば、リンをドープしたダイヤモンドはn型半導体になることが期待されているが、これを達成するのは難しい。そこで、光電子ホログラフィーを用いてリン原子周辺の立体原子配列の解明を行ったところ、リン原子はダイヤモンド中で空孔を伴った配置になることが特定された[1]。他にもSi結晶中のAsドーパント[2]、グラファイト中のCa, Kインターカレーション[3]などの研究成果があり、さらに超伝導物質のドーパント、MoS2のNaインターカレーション、GaNドーパント、GaN-酸化膜の界面構造、ダイヤモンド-絶縁膜の界面構造、Si初期酸化構造などの研究が進められている。
これらの研究を推進するにあたり、新型の小型電子アナライザーの発明[4]と光電子ホログラムのシミュレーション、スパースモデリングを用いた立体原子像再構成理論[5]などの研究も行った。これらについて紹介をする。

[1] T. Yokoya, T. Matsushita, et al., Nano Lett., 19, 5915 (2019).
[2] K. Tsutsui, T. Matsushita, et al., Nano Lett., 17, 7533 (2017).
[3] F. Matsui, T. Matsushita, et al., Sci, Rep., 6, 36258 (2016).
[4] T. Muro, T. Matsushita, et al., J. Synchrotron Rad., 28, 1669 (2021).
[5] T. Matsushita, et al., J. Phys. Soc. Jpn., 87, 061002 (2018).

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(公開日: 2022年03月11日)