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コンパクトな集光ミラー光学系で軟X線のナノ集光を実現 ―ナノ分解能の軟X線蛍光顕微鏡を開発―

東京大学物性研究所の島村勇德特任助教、同大学先端科学技術研究センターの三村秀和教授、同大学大学院工学系研究科の神保泰彦教授、理化学研究所放射光科学研究センターの志村まり研究員、高輝度光科学研究センターの大橋治彦室長らによる研究グループは、コンパクトな集光ミラー光学系の開発によって従来に無いナノ集光と蛍光顕微鏡観察を実現しました。

本研究の転換点は、図のように、ミラー長およびミラーと集光点までの距離が共に最短2 mmとなる、極めて短い設計を採用したことです。独自の加工・計測技術を開発し、本設計を具現化しました。作製した超精密小型集光ミラーによる軟X線の集光サイズ(注1)は、最小20.4 nmを記録しました。この集光点を多色軟X線分析手法に応用し、神経細胞中の元素量と濃度を100 nm空間分解能で評価することに成功しました。

本研究によって、細胞中で新薬が到達する場所が可視化できる等、生物学・薬学・物理学での貢献が期待されます。コンパクトな光学系により、大型放射光施設に限定されたナノ分析をラボベースで行える可能性があります。

本研究成果は、国際雑誌「Nature Communications」(2024年2月7日)にオンライン掲載されました。なお、本論文は物性研究所の島村勇德特任助教のほか、竹尾陽子助教、および木村隆志准教授が共著となっています。

超精密小型集光ミラーを用いた集光ミラー光学系の模式図

超精密小型集光ミラーを用いた集光ミラー光学系の模式図

東京大学先端科学技術研究センターのプレスリリース

論文情報

  • 雑誌: Nature Communications
  • 題名: Ultracompact mirror device for forming 20-nm achromatic soft-X-ray focus toward multimodal and multicolor nanoanalyses
  • 著者: Takenori Shimamura*, Yoko Takeo, Fumika Moriya, Takashi Kimura, Mari Shimura, Yasunori Senba, Hikaru Kishimoto, Haruhiko Ohashi, Kenta Shimba, Yasuhiko Jimbo, Hidekazu Mimura
  • DOI: 10.1038/s41467-023-44269-w

用語解説

(注1)集光サイズ:
虫眼鏡を使い、太陽の光を黒い紙に集める場合、黒い紙に映る集光点は、中心ほど明るく、端に行くほど暗くなります。ある程度明るく見える範囲の幅を測れば、これを集光点の大きさ(集光サイズ)として定義できます。前述3ページの図2のように、縦軸に光の強度、横軸に位置を表した際、光の強度が最大値の半分となるまでの位置範囲(半値幅)を集光サイズとして定義しています。

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