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小川宏太朗氏(松永研 M1)がテラヘルツ科学の最先端Xにて優秀学生発表賞を受賞

松永研究室の小川宏太朗氏(修士課程1年生)は、12月20日、21日に東北大学電気通信研究所で行われた第10回テラヘルツ科学の最先端Xシンポジウムにおいて優秀学生発表賞を受賞しました。同賞はテラヘルツ科学及びその関連分野に関する優れた研究成果を得た学生に贈られるものです。

受賞対象となった研究は「2色逆回り円偏光マルチテラヘルツパルス発生技術の開発」です。

受賞者の写真

優秀学生発表賞を受賞した小川宏太朗氏

光科学分野では、円偏光を使って時間反転対称性を破ることを利用して物質を光制御する研究が盛んに行われています。ここでさらにもう一工夫して、周波数の異なる二つの逆回り円偏光を使うと、重ね合わさった電場ベクトルは二つの周波数比に応じて3回回転対称や4回回転対称といった、より複雑な軌跡を描くことができるため、この特異な電場軌跡を活用した興味深い研究が理論的に注目されています。このような光源は、可視域や近赤外領域ではすでに実現例がありますが、固体を使った物性研究に適用させるためには、周波数にして10-70 THz程度、波長にして4-30 μm程度のマルチテラヘルツ帯の電磁波を使うことが重要です。しかしこの帯域では利用できる偏光素子が限られていること、さらに二つの円偏光成分間の相対位相を安定に保つことの難しさなどから、これまで光源自体が実現していませんでした。

小川氏は、神田夏輝元助教(現理化学研究所・ISSPリサーチフェロー)と協力して、近赤外パルスを使って2色逆回り円偏光マルチテラヘルツパルスを直接発生させる実験に取り組みました。広帯域化させた近赤外のフェムト秒超短パルスに対して、空間光変調器を使ってパルス整形し、さらに3回回転対称な非線形結晶特有の角運動量保存則を利用して波長変換することで、所望の2色逆回り円偏光マルチテラヘルツパルスを発生させることに成功しました。この光源は、電場軌跡の対称性、形状、向き、回転方向といった様々な自由度をパソコン上から制御することが可能です。さらに相対位相の揺らぎも少なく、非常に安定であることも示しました。この成果は、超短パルスレーザー技術を駆使して特異なテラヘルツ電場軌跡を実現し、新奇物性制御に向けた道筋を大きく広げる画期的な成果であると考えられ、高く評価されました。

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