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近藤雅起氏(徳永研 学振PD)が1000テスラ科学領域会議ポスター賞を受賞

徳永研究室の近藤雅起学振PDは、12月4日から6日にかけて電気通信大学で行われた「1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー 非摂動磁場による化学結合の科学」第2回領域会議においてポスター賞を受賞しました。同賞は学術変革領域(A)1000テスラ科学関連の研究に従事する学生・若手研究者のうち、優秀なポスター発表を行った者に授与される賞です。

受賞対象となった研究は「極性ディラック電子系BaMnBi2における元素置換効果と強磁場輸送測定」です。

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1000テスラ科学 領域会議ポスター賞を受賞した近藤雅起氏

電流や熱流の方向に依存して応答が変化する「非相反伝導」と呼ばれる現象は、スピントロニクスやバレートロニクスなど次世代デバイスへの活用が期待されていますが、いまだ明確に解明されていない現象です。非相反伝導の解明には、バレー(小さなフェルミ面)がスピン軌道相互作用によってスピン偏極した「スピン・バレー結合状態」と呼ばれる電子状態を制御、観測する必要があります。

近藤氏らの研究グループでは、層状ディラック電子系BaMnX2(X=Sb, Bi)が面内方向の極性に起因してスピン・バレー結合状態を示し、更にX原子の種類によってバレーの位置や個数が大きく変化することを見出していました。今回、BaMnBi2のBaをSrへ置換することで、これまでX=Sb, Biの2種類であったスピン・バレー結合状態を系統的に制御することに成功しました。研究グループは、磁気抵抗に現れる量子振動の振動数が、ある一定以上の置換量を境に急激に変化することを発見しました。この変化は、結晶構造の極性-非極性転移と関係していると考えられ、実際に偏光顕微鏡による結晶ドメインのイメージングからその兆候が捉えられました。また、振動数の急変が見られた組成についてパルス強磁場を用いてより詳細に量子振動を検証したところ、Sr置換前のBaMnBi2とは大きく異なるスピン・バレー結合状態が実現していると示唆される結果を得ました。

同研究により、BaMnBi2は元素置換によってこれまで以上に更に多彩なスピンバレー結合状態を実現できることが明らかになりました。これらの結果は、非相反伝導等の輸送現象の解明につながると期待され、一連の研究と発表が評価され同賞の受賞に至りました。

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