Home >  研究会等 > パイ電子系物性科学の最前線

パイ電子系物性科学の最前線

日程 : 2016年8月8日(月) - 2016年8月10日(水) 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 世話人 : 澤 博(名古屋大学)、森 初果 (63444)
e-mail: hmori@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

分子性パイ電子系、特にパイ共役分子を構成成分とする結晶性の電気伝導体を舞台にした量子物性の研究は、その基礎学理の発展と深化、次世代の分子エレクトロニクスの基礎原理の創成を目指している。分子性結晶においては、エネルギー空間及び特徴的な時空間スケールにおいて異なる秩序変数で表現される電子状態が競合・協奏することで、絶縁体、半導体、金属、誘電体、超伝導体等にわたって、エキゾチックな量子物性から巨視的な機能までを自在に操り得る可能性を秘めていることが明らかとなってきた。この観点から、計測技術の進歩によって得られた知見をフィードバックした物質開発の重要性も再認識されつつある。このような研究が目指す方向には、有機デバイスに代表される次世代の電子物性科学は言うまでもなく、さらには、非周期電子系としての生体分子系の理解の達成もある。
電荷、スピン、軌道、イオン(プロトン等)、分子変形、格子等の多様な自由度間の多彩な相互作用の競合による空間的な不均一性、あるいは揺らぎによって生じる様々なエキゾチックな物性が、最先端の計測技術によって観測可能となってきた。具体的には、フラストレーションによる量子液体、電荷揺らぎ、秩序変数が空間振動する FFLO 超伝導、分子内電荷不均化に起因する新奇電子相転移等、多岐に渡っている。更に、これらの研究の理論的な解釈においては、遷移金属酸化物/カルコゲナイドにおける d 電子系、ランタノイド、アクチノイドの f 電子系を含む強相関電子系に繋がる広い分野との意見交換による問題意識の共有が重要となる。電荷ガラスに代表される非平衡状態の開拓やその相制御、更に、電場・光等の外場による定常準安定相の観測を通した非平衡状態の秩序変数の追跡は、ソフトマターを主な対象としている非平衡物性科学に新しい視点を加えると期待される。
本研究会では、分子性パイ電子系の科学とその周辺分野との連携・融合を意識して、関連分野を含め実験・理論を網羅する研究者が一堂に会して、成果発表、意見交換を行うことを目的とする。特に物質開発の現場からの新しい提案を含め、従来の枠組みを超えた創発的な物質開発・物性科学に向けた議論を展開する本研究会を、物性物理学の先端研究のハブである物性研究所で開催することには大きな意義がある。

http://hmori.issp.u-tokyo.ac.jp/tanki160808/


(公開日: 2016年07月21日)