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動く構造を可視化する単結晶構造解析のための計測・解析法開発

日程 : 2019年10月11日(金) 10:00 am 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第一会議室 (A636) 講師 : 星野 学 氏 所属 : 理化学研究所創発物質科学研究センター 世話人 : 原田 慈久(63401)
e-mail: harada@issp.u-tokyo.ac.jp

単結晶構造解析は、分子の3次元構造や結晶構造を観察する手段であり、構造物性研究を支える重要な研究技術に位置付けられる。通常の解析では、回折データ計測実験の時間平均の構造が得られるため、結晶中で熱揺らぎが小さく静止しているとみなせる原子・分子だけが観察可能である。

発表者は、単結晶構造解析を「静止した構造を観察」することに留まらず「動く構造も観察」できる手段に発展させ、物性の詳細を解明する研究を推進している。これまでに放射光ビームラインにおいて、時間分解単結晶構造解析のための計測装置開発や温度可変光照射下薄膜回折装置の立ち上げに携わり[1]、光励起によるナノ秒以内の分子構造変化の観察[2,3]や、分子の大きな熱運動の観察に基づいた光誘起固液相転移のメカニズム解明[4]を達成してきた。

上記の動く構造の観察は、高分解能(回折角が大きい)回折データを高精度に計測することによって成し遂げた。一方で、高分解能回折データの計測が困難(あるいは不可能)な物質や現象に直面する機会[5]も多く、動く構造の観察が適応できる範囲は限定的であることが課題であった。この課題を解決するために発表者は、計測できる少数の回折データを用いて統計モデルを構築し、モデルから計測不可能な回折データを発生させる技術を開発した[6]。本セミナーでは、発表者が開発してきた計測装置ならびに解析技術の詳細を紹介し、次世代高輝度放射光源の利用を想定した将来展望について議論したい。

 

[1] M. Hoshino, S. Adachi, S. Koshihara, CrystEngComm, 17, 8786–8795 (2015).

[2] M. Hoshino, H. Uekusa, A. Tomita, S. Koshihara, T. Sato, S. Nozawa, S. Adachi, K. Ohkubo, H. Kotani, S. Fukuzumi, J. Am. Chem. Soc., 134, 4569−4572 (2012).

[3] M. Hoshino, S. Nozawa, T. Sato, A. Tomita, S. Adachi, S. Koshihara, RSC Adv., 3, 16313–16317 (2013).

[4] M. Hoshino, E. Uchida, Y. Norikane, R. Azumi, S. Nozawa, A. Tomita, T. Sato, S. Adachi, S. Koshihara, J. Am. Chem. Soc., 136, 9158−9164 (2014).

[5] M. Hoshino, A. Khutia, H. Xing, Y. Inokuma, M. Fujita, IUCrJ, 3, 139–151 (2016).

[6] M. Hoshino, Y. Nakanishi-Ohno, D. Hashizume, Sci. Rep., 9, 11886 (2019).


(公開日: 2019年10月04日)