Home >  研究会等 > 機能物性セミナー「高速一分子蛍光分光法によるタンパク質のフォールディング運動の解明」

機能物性セミナー「高速一分子蛍光分光法によるタンパク質のフォールディング運動の解明」

日程 : 2016年3月8日(火) 11:00 - 12:00 場所 : 物性研究所本館6階 第一会議室 (A636) 講師 : 高橋 聡 教授 所属 : 東北大学 多元物質科学研究所 世話人 : 吉信 淳 (63320)
e-mail: yoshinobu@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

 タンパク質は、アミノ酸が一次元的につながった高分子鎖であり、アミノ酸の配列により規定される相互作用により、ランダムコイルであり無数の構造を持つ変性状態から、唯一の構造を持つ折り畳まれた状態に転移する(フォールディングする)能力をもつ。タンパク質フォールディングの分子機構を理解することで、タンパク質の構造予測やデザインなどに役立つ知見が得られると期待される。しかし、過去40年以上にわたる活発な研究にも関わらず、タンパク質の幾つかの重要な物性について互いに矛盾する実験事実が提出され、未だにコンセンサスが得られない状況が続いている。
 我々は、蛍光一分子分光法を用いることで、タンパク質のフォールディング運動の解明に取り組んできた。我々の手法の特徴は、独自のアイディアにより、一分子連続蛍光測定における時間分解能を従来の数ミリ秒から劇的に向上し、数十マイクロ秒にまで短縮したことである。また、一分子蛍光測定における構造情報の分解能も向上させた。これまでに、開発した装置を使ってプロテインAのBドメイン(BdpA)とユビキチンという二つのタンパク質について、観測と解析を進めてきた。二つのタンパク質について得られたデータをまとめると、変性状態にはミリ秒以上の時定数で起きる構造揺らぎが共通して存在した。また、ミリ秒以上の時間領域においても、変性状態の構造の不均一性が残っていた。我々のデータは、変性状態のタンパク質には明らかな構造の不均一性が存在することを示している。一方で、変性状態のタンパク質は均一なフォールディング転移を示す。これらの観察を矛盾なく説明することは可能だろうか。講演では、これまでに得られたデータから示唆されるタンパク質の特性について議論を行いたい。

http://yoshinobu.issp.u-tokyo.ac.jp/20160308Takahashi.pdf


(公開日: 2016年03月01日)