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ナノ形状設計に基づく人工細胞膜の安定化とそのセンサ応用

日程 : 2016年5月19日(木) 11:00 - 12:00 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 平野愛弓 所属 : 東北大学大学院医工学研究科 世話人 : 森 初果 (63444)
e-mail: hmori@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

細胞膜は厚さ4-5 nmの自然界のナノ薄膜であり,化学的,光学的,機械的刺激に対する高感度なバイオセンサでもある.その構造は,リン脂質分子が二層向かい合って整列した脂質二分子膜を基本構造とし,その中にイオンチャネル等の膜タンパク質が埋め込まれて構成されている.イオンチャネルは細胞膜における高度な情報伝達を担っており,創薬分野における主要な開発ターゲットでもある.また,近年は,致死性の薬物副作用を引き起こすイオンチャネル(human ether-a-go-go-related gene (hERG) チャネル)の問題から,創薬分野においてイオンチャネルに対する薬物(副)作用を評価すること,特にチャネル機能をチャネル電流として記録しながら薬物作用を評価することの重要性が高まっている.現在は,生体膜におけるチャネル電流を記録するパッチクランプ法が主に用いられているが,全細胞電流を記録するため,細胞の状態や共存チャネルの影響を受けやすい等の問題点を抱えている.一方,細胞膜を模した脂質二分子膜中にチャネルタンパク質を包埋した人工細胞膜系は,細胞状態に依存しない薬物作用評価系として注目を集めているが,脂質二分子膜の脆弱性がその発展の障壁となっていた.本講演では,半導体微細加工と脂質二分子膜形成の融合により脂質二分子膜の安定化を達成した我々のアプローチと,それをhERGチャネル副作用評価系へと展開した最近の例を中心に紹介したい.


(公開日: 2016年05月02日)