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Transport properties and strong Rashba effect for ultrathin films and interfaces of conductive perovskite oxides

日程 : 2024年4月10日(水) 1:00 pm - 2:00 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : Dr. Hikaru Okuma 所属 : Department of Basic Sciences, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo 世話人 : Mikk Lippmaa (63315)
e-mail: mlippmaa@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 英語と日本語

ラシュバ効果とは反転対称性が破れた系で発現するスピン軌道相互作用であり、電流によってスピン偏極を誘起できるため、基礎物理と応用の両面から注目を集めている。実際、近年、強いラシュバ効果を有する酸化物で、スピン流から電流への高効率な変換現象や、結晶の面方位を変えた場合での高温超伝導、トポロジカルなバンド構造に由来した新奇な現象が次々と見つかっている。そのため、酸化物で強いラシュバ効果を持つ新物質を作製する意義は大きい。SrTiO3やKTaO3等の酸化物半導体界面に形成される2次元電子ガスでは、トランジスタやヘテロ界面作製による人工的な電場の形成によって、ラシュバ効果が増大できる[1]。これに対し、一般に多数のキャリアが存在する導電性極薄膜では電場が遮蔽されることから、ラシュバ効果の増大指針は未解明のままである[2]。
そこで、本研究では原子番号、膜厚、乱れが異なる一連の導電性酸化物SrMO3 (M=V、Nb、Ta)極薄膜をパルスレーザー堆積法や電気化学エッチング法を用いて絶縁体基板上に作製し、低温域までの輸送特性を調べることを通して、酸化物でのラシュバ効果の増大指針を得ることを目的とした[3-5]。多くの極薄膜では室温付近で、金属的な伝導を示すとともに、極低温で弱局在による抵抗率の上昇が観測された。極低温、弱磁場での磁気抵抗を弱局在の理論を用いて解析したところ、すべての物質でD’yakonov-Perel型のスピン緩和機構を示し、ラシュバ型のスピン軌道相互作用が働いていることを明らかにした。また、VからNb、Taへ原子番号を大きくすることでラシュバ効果が増強し、SrNbO3とSrTaO3では導電性酸化物の中で最大級のラシュバ効果を得ることに成功した[4,5]。さらに、SrNbO3/KTaO3界面での2次元電子ガスの創製と制御を目指す研究も行った。SrNbO3を用いると、これまでのKTaO3界面の中で最大のキャリア濃度の電子を誘起できること、トランジスタによる人工電場なしで強いスピン軌道相互作用が得られること、そしてその大きさを強電場で制御できることを発見した[6]。講演では他の酸化物極薄膜や酸化物半導体界面とも比較しながら本物質系の特徴を議論する。

[1] H. Nakamura et al., PRB 80, 121308 (2009).
H. Nakamura et al., PRL 108, 206601 (2012).
[2] S. P. Chiu et al., PRB 96, 085143 (2017).
[3] H. Okuma et al., PRB 105, 045138 (2022).
[4] H. Okuma et al., PRMater 8, 015001 (2024).
[5] H. Okuma et al., arXiv:2403.12612.
[6] H. Okuma et al., iWOE-29, Busan, Korea, P2-39, 15-18 Oct. 2023.


(公開日: 2024年03月29日)