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平川金四郎名誉教授 第9回中性子科学会功績賞受賞

平川金四郎名誉教授

本所名誉教授平川金四郎先生が、このたび第9回中性子科学会功績賞を受賞されました。中性子科学会の功績賞は、我が国の中性子科学の発展に顕著な功績のあった者に与えられる賞です。平川先生の受賞テーマは「中性子散乱による軌道自由度と低次元量子磁性の先駆的研究」です。平川先生は、現在、世界的にも盛んに研究されている軌道の自由度がもたらす量子電子物性や低次元磁性体の研究の先駆者です。擬立方格子のKCuF3結晶の研究から3次元結晶における『軌道秩序』が低次元磁性と量子効果をもたらす事を、中性子散乱を主とした実験で証明した最初の人なのです。また、高温超伝導銅酸化物の一つであるLa2-xSrxCuO4系と同型の結晶構造を持つ2次元反強磁性体ハライド化合物K2MF4系 (Mは遷移金属イオン)を系統的に研究し低次元磁性体の相転移の研究から相転移の普遍性を中性子散乱実験によって実証するという先駆的かつ画期的成果を遂げ、その美しい実験データは、ほとんどの磁性の教科書に紹介されています。

また、平川先生は純良の大型単結晶を自給し、その試料を使って極低温中性子散乱実験を実行するという独自の研究スタイルを創造することにより、ご自身の物理学を独創されました。中性子強度が弱かった我が国の研究用原子炉(JRR-2)において東京大学物性研究所の中性子散乱グループを牽引して、欧米の研究成果を凌駕するすばらしい研究成果を遂げ続け、中性子散乱分野の多くの後継者を育成されました。

平川先生の研究哲学は以下の言葉に集約されています。
『日本の原子炉(JRR-2)は欧米の一流の高束中性子炉に比べると一桁以上強度が弱く、それらの中性子散乱施設との競争に勝つには彼らと同じことをやっていては初めから勝負にはならない。欧米人がやっていない原理的に新しい研究に狙いを定め、しかも彼等よりも早く結果を出さねばならない。』

今日、世界と肩を並べているJRR-3の中性子源(そしてJ-PARCの中性子源)が実現したことも、平川先生を初めとする第一世代の中性子散乱研究の先駆者の先生方が、その独創性豊かな研究成果をもとにして、日本に非弾性散乱研究の出来る中性子源の建設を希求し運動していただいた賜なのです。

(公開日: 2011年11月30日)