「近藤効果」の近藤淳博士、ご逝去
物性物理学の理論家で「近藤効果」を発見するなど、物性物理学に貢献されてきた近藤淳博士(享年92歳)が2022年3月11日にご逝去されました。ここに謹んでお知らせいたします。
近藤氏は、物性研究所に1963年まで助教として勤められ、転出した工業技術院電気試験所(現・産業技術総合研究所)にて1964年に「近藤効果」を理論的に解明・発表しました。近藤効果とは、鉄など磁性を持った元素がごく僅かに混入した金属では、温度を下げていくと絶対零度付近で電気抵抗が大きくなる現象です。通常、金属は低温になるほど電気抵抗が小さくなるのに対し、極低温で電気抵抗が大きくなる現象は1930年ごろから知られていましたが、これを理論的に解明しました。
近藤効果はその後も集中的に研究が行われ、不純物の持つ磁性がまわりの自由電子によって遮蔽されて消失する電子の多体現象として広く認識されるようになりました。重い電子系の発見により新たな視点から研究が発展したほか、今世紀に入ってからも半導体や表面、冷却原子系を始めとした多くの物理系で近藤効果が活発に議論されており、現在も様々な分野で研究が進められています。